A DUET OF WARP AND WEFT
縦糸と横糸のデュエット
May 2019
photography kim lang
ダブルブレステッド・ジャケットのボタンを外すと、中のウエストコートが現れる。これもダブル仕立てだ。
「ラペルのロールが長いため、ウエストラインは完璧に仕立てなくてはなりません。ボタンの位置が高ければ、ウエストラインにもう少しゆとりがあっても目立ちませんが、ボタンの位置が非常に低いですから、ウエストラインを正確に仕立てることが、全体を安定させます」
ケント氏はこのスーツが30年代を思い起こさせるという。もっとも、当時の生地はもっと重かっただろう。彼は、このヴィターレ・バルベリス・カノニコの軽やかな生地を非常に気に入ったという。
「素晴らしい生地でした。生地がスタイルを引き立てました。ピンストライプがスーツ全体を縦長に見せてくれました。幅広のラペルと釣り合うよう、トラウザーズには太めの折り返しを付けました。伝統的なサイズではおかしかったでしょう。結局、5.4cmになりました」
ピンストライプの難しさ 私たちにケント&ヘイストを紹介してくれたのは、友人であり、本誌の寄稿者でもあるニック・フォルクス氏だ。英国に彼らを超えるテーラーはいないというのが、フォルクス氏の主張である。ケント氏には顧客の願望に対する第六感のようなものがあり、心理的要求まで理解してくれるという。
婦人物として仕立てられたダブルスーツは、ボタンの掛ける位置を変えられるようになっている。これは一番下のボタンを掛けて着たところ。