A BRILLIANT SUPERNOVA
―Hosoï-Paris ホソイ-パリ―
MOF受章職人による
パリ発の研ぎ澄まされた鞄
June 2021
長年エルメスで経験を積んできた細井 聡氏が、自身のブランドをパリで始動した。
text yuko fujita
Either 38写真のように上を開くとトートバッグになり、閉じると次頁<写真4枚目>のようにボストンバッグになる「Either 38」。胴面の刻印ナンバーはホソイ パリの鞄を複数個所有している人のための識別用として生まれ、アイコニックデザインとなった。革はベイカー社の復刻ロシアンカーフレザー。ホソイ パリはオーダーのみの展開だが、細井氏は経験の中で築き上げたデザインの表現の仕方をすべて計算して制作しており、デザイン変更は受けつけていないという。W38×D17× H26(H38)cm。6900ユーロ~(オーダー価格)。Hosoï-Paris(ホソイ パリ info@hosoiparis.com)
Satoru Hosoi / 細井 聡1979年生まれ。2000年にイタリアのフィレンツェに渡り、モデリズムなど基礎技術を学ぶ。2003年に帰国後、2004年に渡仏。エルメスの子会社のアトリエで研修したのち、2006年にエルメス本社に入社。2015年、MOFを受章。その後はモワナ(MOYNAT)でデザイナー兼パタンナーとしてキャリアを積み、2020年に自身のブランド「HOSOÏ-PARIS」を始動。
2004年からパリに移り、エルメスの生産アトリエと新作を創造するためのサンプル作りのアトリエで経験を積み、2015年にはフランスの“国家最優秀職人章(MOF)”を受章。とてつもない経歴をもった細井 聡氏が、パリ11区にある職人の工房が集まったCours de l’Industrieに工房を構え、自身のブランド「ホソイ-パリ」をスタートさせた。
エルメス時代もずっとデザイナーになりたかったと話す氏は、世界最高の舞台で職人として10年間の経験を積んだのちに、MOFを受章。転機を迎え、その後舞台をモワナ移してデザイナー兼パタンナーとして活躍し、職人の側からデザインにアプローチできる実力を身につけた。
デザインはディテールの集合体であり、ひとつのディテールを蔑ろにしてしまうとすべてのバランスが崩れてしまうという考えのもと、余白を大切にし、ディテールは余白をきれいに見せるためのものとして鞄をデザインしている。小さな金具もときに顔と成り得ると話し、自分でデザインし、ロストワックスで削り出すところから製作するこだわりようだ。
「フランス仕立ての特徴として、革本来の厚みをできるだけ残したまま制作しています。それぞれの革の個性をそのまま鞄の長所として生かし、より自然で美しいエイジングが可能になるからです」
革をいかに自分の思い通りにコントロールできるかに細井氏は注力する。デザイン、細部へのこだわりによって使ったときにどうシワが生まれるのか、そこを綿密に詰め、そのシワにまでデザインとしての機能をもたせる。革と対話しながら、職人としての思考を融合させてデザインを創造していくのだ。
ホソイ-パリはほかに類を見ないほどのこだわりをもってひとりの職人がAからZまでを手がけている世界最小のブランドだ。が、そのクオリティの高さを考えれば、世界最高の鞄ブランドとして世界に名を轟かせるのも時間の問題だ。
「Sa-k-ra」(4000ユーロ)はトリヨンレザーを使用したトートバッグ。柔らかな仕立てで、ハンドルの付け根の感覚を広くしており、持つと鞄が自然と閉じる構造。付属のキーケースには真ちゅうの重しが入っている。
ハンドルを短くし、シワが上手く作用してクラッチバッグのように抱えてもてるようデザインした「Tolbiac」(6000ユーロ~)。スエード部分のステッチはすべて見えない仕立て。
手縫いを含めて全工程を細井氏ひとりで手がけている。
シュランケンカーフの「Either 43」(7200ユーロ~)は、「Either 38」のサイズ違い。ボストンバッグにした状態。
金具も自分でデザイン、設計、加工している。
本記事は2021年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 39