Wednesday, February 27th, 2019

UNPEELING THE BIG APPLE
N.Y.流スタイルとは何か?

今、再びメンズウェアの世界では
アメリカンスタイルに注目が集まっている。
アメリカのメンズウェアを創造してきた街ニューヨークで、
キーパーソンたちのニューヨークスタイルを紹介しよう。
text yoshimi hasegawa photography rose callahan

G.Bruce Boyer
G.ブルース・ボイヤー

メンズウェアの歴史に精通、アメリカを代表するファッションジャーナリスト。『タウン&カントリー』誌のエディターから、現在は『ニューヨーク・タイムズ』紙、『THE RAKE』、『GQ』、『エスクァイア』等に寄稿、数多くの書籍も出版。N.Y. のFITのミュージアムで展覧会を開催するなど業界の権威者として知られている。

重鎮が辿り着いた究極のスタイル

長年にわたり、アメリカ、さらに世界のメンズウェアを知り尽くしたエキスパートが語るアメリカンスタイル発展の歴史とニューヨークスタイルの真髄とは?

アメリカンスタイルとは何か? ここはニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるテーラー、G.ミューザー。G.ブルース・ボイヤー氏はいつものように穏やかな口調で、この問いに対するキーワードは「民主主義」と「コンフォート(快適さ)」のふたつだと語り始めた。
「伝統的なアメリカンスタイルは民主主義という政治的なアイデアのもと形成された。アメリカは19世紀半ばに高品質の既製品の製造を行った最初の国です。私たちアメリカ人が考える民主主義は、特権階級でなく平等にウェルドレスになれる国を意味していたのです」
 誰もが考えるアメリカンスタイルのアイコン、ブルックス ブラザーズのNo.1サックスーツやボタンダウンカラーシャツといった既製服は、確かに民主主義の思想の元、生まれたものに違いない。それは自動車における「大衆のための車」フォルクスワーゲン同様、20世紀の人々のライフスタイルに
革命をもたらした。
「その結果、ヨーロッパのように服装で権威や階級を誇示する必要がなくなりました。アメリカンスタイルで最も重要とされるのはコンフォートです。例えばアイビースタイルはソフトなジャケットにボタンダウン、スリップオンシューズと、今までに比べカジュアルでフレンドリー、堅苦しくない。それがアメリカンスタイルです」
 ボイヤー氏が選んだアメリカンスタイルはリヴェラーノ&リヴェラーノのブレザー、ドレイクスのサファリジャケット、アンダーソン&シェパード(A&S)の3ピーススーツ、その内容はイタリア、アメリカ、英国のミックススタイルだった。
「ブレザーはウェルドレッサーになりたいと思う者なら、すべての者がワードローブにまず揃えるべきアイテムです。グレイのトラウザーズにタイドアップやジーンズとさまざまに着こなすことができる。アメリカンスタイルとしても100年以上の歴史があります。サファリにはアメリカンスタイルが生んだスポーツクローズの思想があり、A&Sのスーツにはコンフォートがある。まるでフレッド・アステアがホワイトテイルコートをパジャマのように着こなしたリラックス感。それこそがアメリカンスタイルの真髄であり、私が愛するものです」
 さらに今回のように、さまざまなアイテムを自己流にミックスしたスタイルこそ、ニューヨークスタイルそのものだとボイヤー氏はいう。
「ニューヨークは偉大な移民の歴史によって作られてきた街です。あらゆる国の民族が集い、イタリアン、ブリティッシュ、アイビーすべてを取り入れてきた。それが現在のニューヨークスタイルとなっています。それに似たテイストを持つのがリヴェラーノ&リヴェラーノです。ナポリタンに近いナチュラルなショルダー、胸のドレープはA&Sに近いがフロントダーツはないといったように、異なるスパイスを用いながら、アントニオ・リヴェラーノ氏が創造した独自の美しいスタイルを作り上げています。このように私の考えではニューヨークスタイルはフォーマル過ぎず、客観性を持って自分を見つめ、オリジナルなスタイルを創造することです」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 25
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