Wednesday, February 27th, 2019

UNPEELING THE BIG APPLE
N.Y.流スタイルとは何か?

text yoshimi hasegawa photography rose callahan

David Coggins
デヴィッド・コギンズ

メンズウェアを中心にアート、トラベルなどライフスタイルについて寄稿するライター&編集者。『コンデナスト・トラヴェラー』のコントリビューティング・エディターを勤め、近著には『Men&Manners』がある。父は受賞歴もある作家にしてアーティストのデヴィッド・コギンズ。ニューヨーク在住。

J.ミューザーのビスポーク、グリーンツイードのヘリンボーン柄ジャケットにモールスキンのトラウザーズ。ピンクのシャツはフリーマンズ、ニットタイはドレイクス。ポケットチーフはドレイクスの別注。

お洒落は“知性”のゲームだ

メンズウェアとルールを愛し、男のライフスタイルの求道者であるデヴィッド・コギンズ。
父から継承したアメリカントラッド、そこから彼自身が辿り着いたスタイルこそニューヨークスタイルだ。

 本棚には溢れんばかりの蔵書、デスクには古いタイプライター、乱立するウィスキーの瓶、草臥れたブラウンレザーのソファの前には暖炉があり、足元にはいい風合いに擦り切れたカーペットが幾重にも重なる。
 果たして、これ以上の理想の男の栖があるだろうか。
 住んで9年になるというデヴィッド・コギンズ氏のアパートメントには彼の思い描く「男の小宇宙」が展開されている。
 このエリアは感度の高い人々が住む瀟洒なところで、洒落たカフェやビストロもある。前述のテーラー、J.ミューザーも徒歩圏内だ。
 コギンズ氏はミネソタで生まれ、大阪をはじめさまざまな土地に住んだ経験があるが、ニューヨークに住んで21年になる。
「ニューヨークのスタイルは人によって全く異なります。ニューヨークに住むのはタフだし、ここで生き残るには主張する必要がある。だから、彼らはとてもエネルギッシュで個性的、それぞれ固有のスタイルがある。時に派手だったり、時にとてもコンサヴァティブ(保守的)とさまざまです」
 しかし、ニューヨークにはこれがニューヨークスタイルと決定づけられるような制服は存在しないと語る。
「トラディショナルなブルックス ブラザーズのサックスーツのように、典型的なアメリカンスタイルは、今やもう存在しないでしょう。むしろブルックス ブラザーズが提唱したアメリカンスタイルを現代版に解釈したのがラルフ ローレンであり、RRLだと思います」
 コギンズ氏自身はあまり買い物するほうではないと言うが、自身がニューヨークで通う気に入りの店はラルフ ローレンにRRL、J.ミューザーにフリーマンズスポーティングクラブだ。
「好きなのはアメリカのブランドだけではありません。今までさまざまな違うスタイルを取り入れて、新しいものを独自の方法でミックスしてきた、それこそがアメリカンスタイルです。リラックスしたスタイルのマッシモ アルバやリヴェラーノ&リヴェラーノといったイタリアの服、ドレイクスも好きですね。ドレイクスにはイージーでリアルな感覚がある。共通しているのはオープンマインドで、コンフォタブル(快適)ということです」
 もうひとつのアメリカンアイコン、アイビースタイルについての洞察もライターならではの視点が興味深い。
「アイビースタイルは非常に知的なアプローチを用いて、伝統的なスタイルから、リラックスした新しいアメリカンスタイルを創造しました。それは現代のアメリカンスタイルにも通じるものです」
 このアイビースタイルに対する解釈は、「装いは知性のゲーム」とでもいうような、時に知性的、時にラギッドな彼の着こなしにも表れている。
 さらに、良いアメリカ人男性としての資質は、服装はさして重要でなく、懐の深い、正直でフレンドリーな男であることが大切だという。
「しばしば、男は自分の服装を愛しすぎて、細部に気をとらわれる傾向があります。私自身、テーラーリングや服装を語ると夢中になりますし、実際、自分の人生を楽しんでいる男の話はいつ聞いてもいいものではないでしょうか。特に典型的なオールドマン(老人)、それもウェルドレッサーの彼らが、長年かけて完成させた装いには学ぶことが多くあります。彼らには他の者には真似できない良いキャラクターがある。男の装いには特にそれが重要です。とどのつまり、人々は服装を見ているわけじゃない。その男そのもの、全体を見ているわけだから」
 今まで、なぜ服好きになったのか、その経緯を訊ねると父からの影響を語る人物は実に多かった。コギンズ氏も作家にてアーティストである父から多大なる影響を受けているという。
「子供のとき、どうするべきかという規範は誰でも両親から学ぶものです。ティーンエイジャーのときはポロなどカジュアルが好きでしたが、ある日、父にラルフ ローレンへ連れて行かれて、ブレザーを買えと言われました。若いときはブレザーなんて欲しくないものですが、嫌だと言っても『ダメだ!お前にはこれが必要なんだ』と押し切られましたよ(笑)。20代、30代と歳を取るにつれて、テーラーリングに興味を持つようになったんです。だから若いときにはレッスンが必要で、後から両親が正しかったと気がつくことがあるということですね」
 彼の著書のタイトル通り、まず男にはマナーが必要だ。そこから崩すことを学び、年齢を重ねていく。個性あるオリジナルのニューヨークスタイルはそこから生まれる。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 25
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