October 2019

The siren’s call:how Brigitte Bardot redefined female sexuality

女優:ブリジット・バルドー
セイレーンの呼び声

text nick scott
issue10

『Les Femmes(原題)』(1969年)のワンシーンでのバルドー。

 では、その他大勢の“セクシーな若い女性”との違いは何だったのだろう?

「セクシーさに関して言えば、例えばマリリン・モンローには、非常にもろい雰囲気がありました。ところがバルドーはたくましい。自然体で自信に満ちていました。彼女の最大の魅力となったのが、あの生意気さです。彼女は批判されると反論しましたが、それさえ魅力的でした」

 誰よりもそう感じていたのは、バルドー自身だっただろう。その証拠に、かつて彼女は「やんちゃで自由奔放な私を見て眉をひそめた人もいたけれど、しがらみから解放された人もいたわ」と述べた。

 バルドーの中で渦巻いていた性愛のエネルギーは、年下の女優、レティシア・カスタへの助言が物語っている。2010年の伝記映画『ゲンスブールと女たち』でバルドー役を演じたカスタによると、役作りをする彼女に対し、バルドーは「部屋に入るときは顔を上げて、全員と寝たがっているような表情をするのよ」とアドバイスしたという。

 自らを「お粗末な女優」と呼んだバルドーは、性欲の旺盛な女性を演じる必要などなかったはずだ。なぜなら彼女自身の実生活における恋愛遍歴は、まさに“驚異的”であるからだ。

全身が“ふしだら”な女 1958年、フランスの週刊誌『パリ・マッチ』は、24歳になったブリジット・バルドーを「頭のてっぺんからつま先までふしだら」と評した。しかし彼女は、戦後社会の“ふしだら”の象徴となるべく育てられたわけではなかった。

 1934年、バルドーは戦間期のフランスで生まれた。父親は実業家で、アッパーミドル階級らしいお堅い家庭教育を受けた。一家のアパートメントは7つのベッドルームを備えており、エッフェル塔に近い高級住宅街、パリ16区にあった。

 ところが19歳になるまでにバルドーは、すでに『エル』誌にて特集が組まれ、自殺を図り、4人の夫のうちのひとり目と出会っていた。その男性こそ、彼女を発掘した映画制作者、マルク・アレグレのアシスタントをしていたロジェ・ヴァディムだ。

issue10

黒猫とポーズを取る姿(1956年)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 16
1 2 3 4 5 6

Contents