Sunday, January 17th, 2021

The Rock’n Roll Tailor

70年代を駆け抜けた伝説のテーラー
トミー・ナッターの魂

text yoshimi hasegawa
photography edward lakeman

 当時の顧客はビージーズ、エルトン・ジョン、ビアンカ・ジャガー、F1運営組織CEOバーニー・エクレストン、作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー、そして女王陛下のテーラー、ハーディー・エイミス卿まで、実に多彩で豪華だ。

「私が作るスーツはトミーが創ったスタイルを受け継ぎ、そこから私自身の経験を生かして作り上げたスーツだ」

 経験によって磨かれたモーガン氏のカッターとしての技術に加え、英国紳士の「ジェントルマンネス」を体現する穏やかな接客、そして何より、エレガントなスーツのシルエットの流麗な美しさ、ダークカラーでもこれほど色気のあるスーツは他に類をみないだろう。

 ここでは単なるビジネス上の儀礼としての退屈なスーツは存在しない。それこそがトミー・ナッターがサヴィル・ロウに持ち込んだ美学である。

1975年の台帳はトミー・ナッター直筆のもの。顧客の名はエルトン・ジョン。ダブルスーツにオックスフォード・バグスなどスーツのディテールも詳細に書き込まれている。

 このスーツの素晴らしさを表しているのが、顧客からの長年のロイヤリティに他ならない。ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツは1970年代から現在に至るまでの50年近い顧客なのだ。

 チャーリー・ワッツのスタイリッシュでディスクリートなテイストは、そのままモーガン氏の作るスーツと、本人の持つ抑制したエレガンスに重なる。

「彼は本当に難しい顧客なんだ。なぜなら自分の欲しいものが常にとても明確で、それ以外は一切受け付けないから」とモーガン氏は笑った。

 チャーリー・ワッツのみならず、世界のセレブリティがこの小さなサヴィル・ロウ・テーラーを支持している。その理由は寸分の妥協を許さず、自分たちの最上のクオリティのビスポークを提供する、彼らの姿勢と技術を高く評価しているからに違いない。

本記事は2015年3月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 03

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