70年代を駆け抜けた伝説のテーラー
トミー・ナッターの魂

　現在のモーガン氏はナッターのエッセンスを生かしつつ、現代にフィットするスタイルの提案をしている。

　例えば、ウェストコートはビジネスにもカジュアルにも着用できる、非常に汎用性の高いアイテムだが、単体で着ることを前提に、バック部分も前身頃と同じ服地で作っている。

　さらにラペルを付けたり、ミラネーゼ・ボタンホールをあしらうことで華やかさも加わる。ポケットが付いているので携帯や財布も入るし、ジーンズにも合わせることができる便利なアイテムだ。

　こうした発想は若い顧客との付き合いから生まれている。「時代遅れにならず、若い人たちに受け入れられるものを作ることは、テーラーにとってとても重要だ」とモーガン氏は語った。

モーガン氏が好むミラネーゼ・ボタンホール。通常のフラワー・ボタンホールに比べ、特殊な芯糸を用い、高度な技術と時間を要するが、これによりディテールに華やかさが加わる。

背中からウエストにかけて、吸い付くように大胆に絞り込んだシルエットこそ、ナッターから受け継ぎ、モーガン氏が進化させたもの。着用時のバックラインの美しさは特筆に値する。