THE RAKE PERSONIFIED

小説家ジェイ・マキナニーのスタイル

January 2020

text wei koh

クリスマスパーティーで、友人である共同主催者のジョージ・ファリアス氏と(2018年)。

W:サヴィル・ロウの老舗ではなくナッターを選んだのはなぜでしょう?
J:美しく仕立てられていながらも、ちょっとスマートでロックなスタイルが欲しかったんです。小説家として、普通のビジネスマンみたいな格好はしたくなくて。それからビスポークはナッターのみ、という時代が何年も続きました。そして1990年代半ばになってからようやく、サヴィル・ロウを訪れたんです。

W:かっちり系とドレープ系のどちらのスタイルを選ばれたのですか?
J:両方です。まずはアンダーソン&シェパードとハンツマンへ行ってみました。いずれのハウススタイルも本当に気に入りました。アンダーソン&シェパードは、胸のドレープがダブルスーツの美しさを際立たせていたと思います。しかしご存じの通り、ダブルはその後下火になりましたよね。再び流行りだしたのは比較的最近でしょう? 90年代は私もシングルを着ることが多かったので、ハンツマンのほうが好みに合うと判断しました。それからジョージ クレバリーへ行って、靴も何足か誂えました。脚本をどんどん書いていた当時は、結構リッチな気分だったんですね(笑)。あのとき誂えたスーツは今でもすべて持っています。しかも今風に着られるように、ちょうど最近ハンツマンに直してもらったんです。25年前のジャケットを調整し、また身に着けて最高の気分になれるというのは本当に素晴らしいことですね。

W:今はチフォネリの顧客でもいらっしゃいますよね。どのような経緯があったんでしょうか?
J:ロレンツォ・チフォネリ氏とは、妻の友人であるプリンス・ディミトリ・オブ・ユーゴスラビアを通じて出会いました。プリンスの着ているジャケットに見とれ、誰が仕立てたのかお尋ねしたのです。当時の私はチフォネリのことを知りませんでしたが、ロレンツォがニューヨークに来ることをプリンスから聞きました。チフォネリのカットの好きなところは、独特なショルダーのおかげで非常に動きやすいにもかかわらず、胸の部分は比較的スリムであるところです。歳を重ねると細身ではなくなりますから、シルエットを賢く選ばねばなりませんね。

W:きちんとした身なりをするのは作家の方々にとって流行だったのですか?
J:いいえ、まったく。文学界では、身なりが悪くて外見を気にしないことが信憑性の象徴だったんです。私は文学界では時々、胡散臭いと思われていました。装いに気をつけていましたからね。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 29

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