January 2020
THE PROPHET of SOLOMEO
“ブルネロ·クチネリ”
ソロメオ村の哲学者
——— 携帯電話やソーシャルメディアは不安感を蔓延させたと感じていますか?
「携帯電話時代において正しく生きるためのカギは、内的な生活、つまり秘密の生活を保つこと。もちろん公的な生活はありますが、秘密の生活も持つわけです。過去30年の間に、科学は前例がないほどの躍進を遂げました。結果的に、人々の寿命は大幅に延びました。にもかかわらず、魂の漠然とした不快感が広がっている。携帯電話は多くの実益をもたらしますが、この漠然とした不快感を強めてもいます。今日の人間の心はあまりに多くの強い刺激を受けるため、私たちは常に緊張、恐怖、不満、怒りを抱えた状態にあるのだと思います。その解決策は、他の誰かのために何か親切なことをしようとすることです。これがこの不快感への唯一の対抗手段です。ロシアの神学者であり哲学者であったパーヴェル・フロレンスキイは、大粛清中の1937年に死刑を宣告されました。刑が執行される直前、彼は自分の子供たちに手紙を書きました。何か自分にとってうまくいかないことがあるときは、外へ出て星を見上げればすべて解決する。彼はそう子供たちに伝えたのです。私たちは空や星を見上げることの価値を改めて理解する必要があります」
デザインチームは、当社の工場から採用しました——— ですが、科学技術なしで生きられるでしょうか? あなたは技術革新反対者とは明らかに違いますが。
「誤解しないでいただきたいのですが、私は現代人でありたいと思っていますし、実際に現代人です。変化も受け入れます。ですが、造物主が私たちにくださった魂を奪う機器は欲しくありません。私たちは仕事時間の30%を何もしないことに費やしています。私たちは仕事と生活のバランスを見直す必要があります。ブルネロ クチネリでは、1日8時間を超えて働くことはできません。ですが、8時間は真剣に仕事をしてほしいと思っています。メッセージを山ほど送ったり、仕事とソーシャルメディアの間を行ったり来たりすることなく。ここではEメールは送りません。相手の気持ちを感じ取れるよう、電話をかけて対話をします。この方法で互いの人間性を尊重するのです」
——— 現ローマ教皇を率直に称賛してこられましたね。それはなぜでしょう。
「彼は人間関係の価値を理解なさっているからです。彼の教皇名は800年前に生きたアッシジの聖フランチェスコからきています。聖フランチェスコの行った最も重要な事柄は、1219年、殺害される危険があるにもかかわらず、イスラム教のスルタンたちに会うためにエジプトへ行ったことです。そして彼は、“私たちは友になれるだろうか”と尋ねました。彼はこの素晴らしい姿勢を生涯保ち続けました」
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