THE MAGIC DOWN THERE

セレブリティの遊び場、アカプルコの落陽

January 2023

text stuart husband

アカプルコでの長いランチを楽しむ人々、テーブルの左から、ダグラス・フェアバンクス・ジュニア、オスカー・デ・ラ・レンタ、彼の後ろに上半身裸で立つのはエミリオ・プッチ、テーブル右側で赤いシャツを着ているのはホスト役で映画プロデューサーのパット・ディシッコ、その横に立つのはトーマス・リード・ヴリーランド。

 エルヴィスとアンドレスの前にも、アカプルコで注目を浴びた人物はいた。1920年に同地を訪れた若き日のウィンザー公である。彼が訪れて以来、その魅力は名士たちの間に広まっていた。彼はいわば、元祖インフルエンサーであった。

 1930年代には、カルロス・バーナードやアルバート・プーレンといったホテル経営者が、エル・ミラドールやラス・アメリカスといった最先端リゾートを造り始め、外国資本による建設ラッシュが始まった。

 1950年代から60年代にかけて、アカプルコはセレブリティの遊び場としての地位を確立し、湾の北端はソナ・ドラダ(黄金地帯)という名に恥じないものとなった。

「ここは国際的な大金持ちと、それにまとわりつく人々のための一大リゾートになりつつある」

 1966年、『タイム』誌はこう報じ、さらに続けた。

「すでに、ギィ・ド・ロスチャイルド男爵夫妻は家を買い、ローエル・ギネス夫妻とクリント・マーチソン夫妻は自宅を建てたばかりで、サミュエル・ニューハウス夫妻はレジデンスを借りており、ダグラス・フェアバンクス・ジュニアは新居を探している。メキシコの大富豪メルキオール・ペルスキア・ジュニアは、ウォルト・ディズニーやフランク・シナトラなど、彼が『世界最高の人々』と呼ぶ人種のために、500万ドルを投じて開発を進めている」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 48
1 2 3

Contents