セレブリティの遊び場、アカプルコの落陽

プールへと向かう女性のグループ。エイビスレンタカーの創業者ウォーレン・エイビスのヴィラにて（アカプルコのラス・ブリサス、1979年）。

　エルヴィス・プレスリーとウルスラ・アンドレスが主演した映画『アカプルコの海』（1964年）の主題歌は、メキシコの太平洋岸、ゲレロ州にあるヤシの木と山に囲まれた半円形の湾が、太陽と紺碧に輝く海のユートピアであるというイメージを定着させた。

　当時、アカプルコは、すでにメキシコ最大のビーチリゾートとして発展しつつあったが、まだ往時のままの、黄昏の遊歩道や湾沿いの村の面影が残っていた。エルヴィスはアカプルコに行くことができなかった。彼の以前の映画を上映した映画館で暴動が起き、メキシコ当局は彼を「ペルソナ・ノン・グラータ（好ましからざる人物）」に指定していたのだ。しかし、彼がロサンゼルスでシーンを撮影しなければならなかったことは、ほとんど問題にはならなかった。

　批評家たちは、スターや幼稚なストーリー（アンドレスを射止めるために、ライバルであるふたりのライフガードが飛び込み対決をする）は無視した。その代わりに映し出される風景に瞠目したのだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は「有名なメキシカン・リゾートの、魅惑的な旅行ポスター」と評した。『バラエティ』誌は「アカプルコのテクニカラフルな絵巻」と称賛している。