Wednesday, October 28th, 2020

The LAST TYCOON

最後の大君

text ed cripps

 彼の異常なまでの男性としての魅力は、ファッションと人柄を引き立てた。白いスーツ、薄い色のレンズのサングラス、日焼けした肌、整えた髪、優男っぽい雰囲気は、当時の映画業界にありがちなマッチョさを中和する要素だった。今となっては、かつて典型的だった尊大な男性プロデューサーに対して強い不快感を覚える。彼らの権力乱用ぶりは、あまりに長く見過ごされてしまった。だがエヴァンスは、どことなく彼らより自意識過剰で傷つきやすい印象を与えていた。

ハリウッドの伝説へ 不遇な日々を何年も過ごしたエヴァンスだったが、自分を大きく見せようとする彼はカムバックせずにはいられなかった。1994年に、回顧録『くたばれ!ハリウッド』を出版。露骨かつ扇情的で、勢いをもって書かれた同書は、放蕩な逸話や自慢話ばかりだったが、それと同じくらい謝罪の言葉も登場する。この本は、すぐさまハリウッド伝説となり、あらゆるメディアを通して語られた。2002年には本人のナレーション付きでドキュメンタリー映画化され、2017年にはロンドンで舞台化された。

 エヴァンスの面影を感じさせるキャラクターは、映画やテレビドラマなどの大衆文化の中に浸透している。ガーディアン紙は、エヴァンスの手がける映画には不思議な効果があると指摘した。『ある愛の詩』(1970年)の公開後は妊娠率が急上昇し、『ゴッドファーザー』が封切られると、同作を気に入ったマフィアたちが登場人物と同じような格好をし始めた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 36
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