Monday, April 16th, 2018

A SONG OF ICE AND FIRE

相反する魅力を持つ女優

クールでありながらホット、知的でありながらユーモラスなダイアナ・リグは、
半世紀以上にわたって、どんなに血の気の多い男優とも渡り合ってきた。
text ed cripps

Diana Rigg / ダイアナ・リグ1938 年イングランド生まれ。57年に舞台女優としてキャリアをスタート。65年に映画デビューを果たし、69年に『女王陛下の007』でボンドガール(ボンドと結婚した唯一の女性)を演じる。近年は、HBOドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』にオレナ・タイレル役で出演。今も現役で活躍し続ける大女優だ。

 デイム(男性の爵位ナイト”に相当するもの)の称号を持つダイアナ・リグは大御所でありながら遊び心を忘れない、タフで粋な名女優として舞台や映画の世界に君臨している。両親はインドに住んでいたが、彼女自身は伝統的な英国の教育を受けた。1938年にドンカスターで生まれ、ヨークシャーのボーディングスクールを経て王立演劇学校に入学。その後はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでポール・スコフィールド主演の『リア王』でコーディリアを演じた。

 まもなく、60年代の英国テレビシリーズ『おしゃれ㊙探偵』でエマ・ピール役に起用され、チャーミングな女スパイを好演する。このドラマで披露した演技力、特に器用なコメディエンヌぶりは両刃の剣となった。エマ・ピールが着ていたレザーのキャットスーツ(脱ぐのに45分もかかる“悪夢”のような衣装だったらしい)のように、セクシーな小悪魔のイメージからしばらくは脱却できなかったし、カメラマンよりギャラが安いという不当な扱いにも我慢できなかった。

 しかし、多才な彼女はすぐに実力を発揮する。1969年の『女王陛下の007』では、ジョージ・レーゼンビーの相手役としてボンド夫人を演じた。この作品は公開当初こそ酷評されたものの、後に再評価されている。

 クールでありながらホットなリグは、『ホスピタル』で共演したジョージ・C・スコットや『ジュリアス・シーザー』のチャールトン・ヘストン、『世界殺人公社』のオリヴァー・リードをはじめ、どんなに血の気の多い男優とも堂々と渡り合ってきた。脚本家のパディ・チャイエフスキーは『ネットワーク』でフェイ・ダナウェイが演じた役にリグを熱望したが叶わなかったため、役名をダイアナに変えたほど惚れ込んでいたという。

 リグの演技には舞台出身ならではの華がある。『シェークスピア連続殺人!! 血と復讐の舞台』や『夏の夜の夢』、『地中海殺人事件』といった映画はもとより、テレビ版ミニシリーズの『レベッカ』でも家政婦のダンヴァーズ夫人を演じてエミー賞に輝いた。

 彼女は舞台でも本領を発揮している。比較的若い頃から、マクベス夫人やクレオパトラ、ヘッダ・ガーブレルといった大役を数多く演じてきたリグは90年代に再ブレイクし、4つの悲劇―エウリピデス作の『メディア』、ブレヒト作の『肝っ玉おっ母とその子どもたち』、エドワード・オールビー作の『ヴァージニア・ウルフなんか恐くない』、ラシーヌ作の『フェードル』で高い評価を得た。その後も『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ピグマリオン』など、人間味あふれる型破りな作品で活躍している。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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