THE DUKE OF BEVERLY HILLS
ビバリーヒルズの公爵
May 2017
『ヴァニティ・フェア』誌の写真撮影のために、ツードをまとってデッキに立つマンジュー(1925年)。
自伝『It Took Nine Tailors』でも、彼は書名にある“9”軒どころか13軒に近いビスポークハウスを、行きつけの店として誇らしげに列挙している。例えば、アンダーソン&シェパード、カラチェニ、ポープ&ブラッドリー、ヘンリー・プール&Coに加え、半ズボンと乗馬服ならサンドン、ベルリンのクニーシェ、ツイード地の服ならスコットランドのP. & J. ハガートといった具合だ。
だが、最も頼りにしていたのは、ロサンゼルスを拠点とするテーラー、エディー・シュミットだった。シュミットのもとを初めて訪れたマンジューは、白いカーネーションと白いスパッツを身に着けた彼の装いにいたく感動し、即座に6着のスーツを注文した。彼はシュミットとともに、紳士服の仕立てにちょっとした革新をもたらしたと主張している。
ジャケットの裏地からバックラムを取り除くことで、胸部の上に緩やかなドレープができるようにした。また、ダブルジャケットの一番上のボタンも、間隔を広げて肩のラインが広がるようした」
こうしたディテールへのこだわりを通じ、マンジューはハリウッドきっての洒落者として日増しに有名になった。