手仕事モノ図鑑01
CICCIO
ビスポークスーツ
May 2020
styling akihiro shikata
チッチオのスーツは通常、2〜3回のフィッティングを経て完成を迎える。初回の仮縫い時はおもに全体のバランスをチェックし、2回目の中縫いでは肩のバランスを注視しているそうだ。写真右上は肩線を解いているところ。反身・屈伸や筋肉のつき方により前身頃と後ろ身頃のバランスは千差万別で、ここを適切に調整することで美しいノボリが生まれる。ちなみに最近、型紙の作り方を一部改良したそうで、腕を大きく上げたときにもより襟が抜けにくくなったとのこと。納期は約6ヵ月〜。オーダー価格はスーツで¥580,000 〜 スーツCiccio シャツ¥26,000 Maria Santangelo / Beams Roppongi Hills タイ¥33,000 Atto Vannucci / Strasburgo
よって、仮縫いの際にはしばしば上襟を外し、肩線も解いて身頃のバランスを微妙に調整する。ちなみに筆者はこれまで4着のスーツをチッチオで仕立ててもらったが、そのすべての仮縫いで肩線が解かれていた。
いつも大らかな上木氏が、このときには厳しい職人の顔になるのを傍に立っていてひしひしと感じる。その後縫い上げていく際に、氏がどれだけの心血を注いでいるかは想像が及ばないほどだ。
かくして仕立て上がった一着は、ごく控えめでありながら生命が宿っているかのようなオーラを纏っている。袖を通すと、これぞ珠玉の手仕事か!という感動を禁じ得ない。それは、実際に仕立ててはじめてわかる悦びだ。
本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 33