PRINCE AMONG MEN

20世紀を代表するプリンス

October 2017

text nick foulkes

ヴェネツィア国際映画祭の期間中、ビーチに寝そべるイーラとアルフォンソ(1957年)

 アルフォンソは海外進出に乗り出した。1979年にはマルベーリャ・クラブ・ マニラの起工式が行われ、マルコス大統領とイメルダ夫人が自家用ヨットで登場して、綺羅星のような貴族階級のゲストたちを歓迎した。マイアミやバハ・カリフォルニア、ジャマイカ、バハマ、アカプルコ、アローヘッドやコロラドに展開する計画もあった。

「マルベーリャ・クラブには、陽が沈まないんだ」とプリンス・アルフォンソはジョークを飛ばしたという。

 しかし、マルベーリャのユニークな環境でなければ、マルベーリャ・クラブ本来の持ち味は発揮できない。プロジェクトはことごとく失敗し、1980年代までには自らが建てたホテルの経営権を失った。

 その後、彼はホテル業を離れ、ワイン醸造家の道を選んだ。すっかり身を落ち着けて3人目の妻との生活に幸せを見いだした。その頃、マルベーリャ・クラブで見かけた彼は、スタッフから実に慕われていた。マルベーリャがあるのはこの白髪の貴族のおかげだということを、スタッフもよくわかっていたのだろう。

 今でもマルベーリャ・クラブは地中海沿岸で一番とは言わないまでも、スペインでは一番有名なホテルだし、そのファサードには今もホーエンローエ家の紋章が掲げられている。そして、創業者の名を忘れないように、同クラブの住所は今でも“プリンス・アルフォンソ・フォン・ホーエンローエ大通り”にあるのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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