October 2017

PRINCE AMONG MEN

20世紀を代表するプリンス

text nick foulkes

マルベーリャ・クラブの桟橋でガールフレンドと(1967年)

すべてを持つ男 ジェームズ・ボンドが12世紀の神聖ローマ帝国まで系譜をたどれる貴族の家系に生まれ、5カ国語を流暢に話し、ヨーロッパの城から城へと飛び回り、ハリウッドの帝王とも本物の王族ともファーストネームで呼び合う親しい間柄だったら……と想像してほしい。プリンス・アルフォンソ・フォン・ホーエンローエ=ランゲンブルクはそんな男だった。

 アルフォンソはマドリード郊外にある城で生まれ、スペインの王族を世話した乳母に育てられたという。彼は名付け親のアルフォンソ13世から名前をもらった。もっとも、ホーエンローエ家はいくつも城を所有していたから、一年の半分は旧チェコスロバキアにある一族の居城で過ごしていた。

「年に2回は旅をしなければならなかった。犬や鳥がいたし、トラックは72台もあったから、子供ながらにとても面白かったよ」と彼は回想している。

 しかし、こうした生活に暗雲が立ち込めたのは1936年7月16日のことだった。「アルバ公が母に電話してきて、『大至急帰れ』と言ったんだ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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