October 2017

PRINCE AMONG MEN

20世紀を代表するプリンス

text nick foulkes

「彼女はナンバーワンのピンナップ・プリンセスだ。ヴェネツィア国際映画祭の映画スターも、このたぐいまれな少女にはかなわない」と『デーリー・エクスプレス』紙は書きたてた。通りや橋には見物客がひしめき、世界中でトップニュースになり、『LIFE』誌ではゴンドラに乗る幼な妻の写真が表紙を飾った。

 だが、この結婚は5年も持たなかった。アニェッリも顔負けの女たらしとして名を馳せたラテンアメリカの“ベイビー”ピニャターリに魅せられたイーラは、子供たちを連れてメキシコシティにある高級ホテル、クリストバル・コロンの6階に引っ越してしまったのだ。そこで彼女は数十人のガンマンに守られていた。しかしアルフォンソは私兵を雇い、同ホテルを急襲し、子供を奪還した。セレブたちの親権争いは、まるで戦争のようだ。

日が沈まない場所 離婚して独身に戻ったプリンスは、マルベーリャ・クラブの経営に打ち込んだ。「マルベーリャがサントロペと並び称されるようになったのは、独身生活を再び満喫していた頃のことだ」と彼は語った。

 マルベーリャ・クラブの評判はうなぎ上りで、スリム・アーロンズ(1960~70年代の、アメリカ上流階級を専門に撮影した写真家)がフルカラーで撮影するような一大リゾートになっていた。

 キューバミサイル危機の最中に、世界の終わりが迫っていることなど気にも留めずに華やかなパーティーが開かれていたのも、スペインで初めてトップレスで日光浴をする女性が現れたのも、マルベーリャ・クラブだった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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