October 2022

MILES TELLER

俳優:マイルズ・テラー
『トップガン』続編で見せた気概

トム・クルーズをスターダムにのし上げた伝説的な大ヒット作、その36年ぶりの続編に抜擢されたマイルズ・テラー。
大スターであり大プロデューサーでもあるトムとともに行った撮影で、次代のスターが受け継いだものとは。
text shiho atsumi
photography gavin bond

Miles Teller / マイルズ・テラー1987年ペンシルバニア州ダウニングタウン生まれ。2010年に『ラビット・ホール』で映画デビュー。アカデミー賞3部門受賞の『セッション』の主演として大きな注目を浴び、SF大作「ダイバージェント」シリーズで人気を、『ビニー/ 信じる男』『アメリカン・ソルジャー』などで不動の評価を獲得。本作のジョセフ・コシンスキー監督作『Spiderhead(原題)』が待機中。

 ドラマーとその指導者の強烈なエゴのぶつかり合いを描いた映画『セッション』(2014年)で、存在を知られるようになった俳優マイルズ・テラー。彼のさらなる飛躍となるであろう作品が、5月27日についに日米同時公開された『トップガンマーヴェリック』だ。誰もが知るトム・クルーズの大出世作『トップガン』(1986年)の36年ぶりの続編でマイルズが演じるのは、前作で死んだ主人公の相棒グース―アロハシャツでピアノを弾く場面が印象的だった―の息子、ルースターである。

「僕が『ルースターになった』と思えた瞬間? アロハシャツを着せられたときかな?どうだろう(笑)。嬉しいことに、ジョー(同作の監督、ジョセフ・コシンスキー)は僕を雇い続けてくれているから、僕は彼からの電話にはなんであれ全力で耳を傾ける。でもこの映画に関しては、必死に売り込む必要なんてなかったね。『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017年)の記者会見のときに、少しだけ話を聞いたんだ。既にトムとも話している、とね。『なんてすごいんだ!』と思ったよ」

 高い評価を得たマイルズの映画デビュー作『ラビット・ホール』(2010年)には、ある逸話が残る。彼が演じたのは夫婦の幼い息子を自動車で轢き殺してしまった青年の役だったのだが、その少し前に実際に交通事故に遭っていたマイルズの演技はあまりに真に迫り、オーディションに同席した母親役のニコール・キッドマンを驚愕させた。彼が事故で左顔面に負ったいくつかの大きな傷痕は、この作品においてはいい方向に働いたが、それ以前は傷痕ゆえに役を得られないことも多かった。当時のマイルズは、まだあどけなさを残す20代前半。だが傷痕ゆえにどこか不敵な雰囲気が漂った。それが見事にハマったのが、壮絶なパワハラ指導によって価値観を歪めてゆくドラマーを描いた『セッション』だ。

 だが正直なことを言えば、そこから数年のキャリアはパッとしない。いや、20代のライジングスターとしては申し分ないという言い方もできる。多くのファンを持つSF小説を原作にした「ダイバージェント」シリーズ(2014年〜2015年)は、シェイリーン・ウッドリー、アンセル・エルゴート、ゾーイ・クラヴィッツなどとともに次世代スターとしての存在を印象づけたし、注目の若手監督を迎えた主演作『ファンタスティック・フォー』(2015年)はリブートされたマーベルの新シリーズで、好評であれば2本、3本と作られる予定だったはずだ。その合間には、ライトなロマンティックコメディにも挑戦している。だが得られた評価も興行成績も「まあ、それなり」というものばかりだった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 46
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