September 2022

THE RAKISH SHOE FILE 001

南雲浩二郎氏:ビスポークはルールを知って微差を楽しむ

30年も前からビスポークシューズを楽しんでいたなんて最高にクールだ。
今見てもゾクゾクする、南雲浩二郎流のツイスト感!
text yuko fujita
photography setsuo sugiyama

Kojiro Nagumoビームス ディレクターズルーム
クリエイティブ ディレクター
1964年生まれ。1985年にビームス入社。インターナショナルギャラリー ビームスに11年勤務。アシスタントバイヤーや、数店舗でマネージャーを務める傍ら、VMDの総合ディレクターを兼任。「BEAMS MODERN LIVNG」のMDなどを経て、現在はビームスに限らず内外の店舗やオフィス内装のデザインディレクションを手がけている。

25年前に購入したキートンのコットンスーツにマリア・サンタンジェロのシャツ、ロメオ ジリのシルクシャンタンのタイをコーディネイト。ブルーのトーンが美しいホーズは約20年前に5足まとめて購入したというパンセレラだ。ジョージクレバリーのバックスキン製3アイレットエプロンフロントダービーが実にクールだ。

 1993年にジョン・カネーラとジョージ・グラスゴーがジョージ クレバリーを復活させる以前から、ふたりが直前まで在籍していたニュー&リングウッド(ビームスは当時、N&Lが買収した「ポールセン・スコーン」ネームの既製靴を扱っていた)でビスポークシューズをオーダーしてきた。その後、南雲氏はクレバリーの日本でのビスポーク受注会の担当者になったこともあり、N&L時代から仕事をしてきた約25年の間に、計20足ほどのビスポークシューズをオーダーしている。

「偉大なふたりの先生は、私のことをクレバリーの魅力を日本のお客様に伝えるスポークスマンという認識でいたので、厳しくも惜しみなくたくさんの不文律を叩き込んでくれました。最初は認めてもらえずダメ出しばかりでしたが、彼らから学んだトーン&マナーを踏まえた私のリクエストも受けてくれるようになったんです。もちろん、私の考えを伝えた際には、それが合っているのか、ふたりに確認する作業は怠りませんでした。ルールをわかったうえで自分なりの微差を楽しめるようになると、ビスポークは楽しい。こうして20年、30年経っても、履き続けられるわけですからね」

左:1996年にビスポークしたタッセルローファー。「タッセルを小さく、モカのツマミを細く、とリクエストし、ちょっぴりドレッシーにしたのがポイントです。パイピングの色もさりげなく変えてあります。彼らの美意識、不文律を尊重しながら、パッと見ではわからない程度に遊んだ一足です」
右:ニュー&リングウッドでの3足目のビスポークシューズ。30年くらい前にオーダーしたものだそうだが、今見てもまったく古さを感じさせない。「オーセンティックなアデレイドをバックスキン(鹿革)でオーダーしました。スエードよりもさらに足触りが柔らかくなって、履き心地がダイナミックに変わるんです」

昔のカタログからデザイングレイッシュなブラウンのバックスキンで、1996年にオーダーした3アイレットのエプロンダービー。「ジョン・カネーラから託された昔のブランドのカタログの中にあったデザインをもとに作ってもらった靴です」。デザインのまとまりが大変美しく、バックスキンという選択が最高にクールだ。モカステッチと丸紐の色も素敵である。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 46

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