October 2022

MILES TELLER

俳優:マイルズ・テラー
『トップガン』続編で見せた気概

text shiho atsumi
photography gavin bond

 軌道修正のきっかけとなったのは20代最後の作品、マーティン・スコセッシ製作の『ビニー/信じる男』(2016年)。脊髄を損傷し再起不能といわれながら、不屈の精神でチャンピオンに返り咲いた実在のボクサーの物語だ。そして迎えた30代で最初の作品が、前述のジョセフ・コシンスキー監督作品『オンリー・ザ・ブレイブ』である。2013年にアリゾナで起きた大規模山火事で、決死の消火にあたったファイアー・ファイターを描いた実話で、ジョシュ・ブローリン演じる伝説的な隊長のもと、成長してゆくやんちゃな新人を演じた。この疑似親子の構図はそのまま、最新作『トップガン マーヴェリック』へと引き継がれてゆく。つまりトム・クルーズ演じる伝説のパイロット=マーヴェリックと、マイルズ演じるルースターとの関係だ。

「作品選びにおいて脚本は常に大事にしている。この作品は脚本に語られるべき物語が多い。マーヴェリックとルースターの間で繰り広げられるストーリーはすごく魅力的だった。前作を振り返りながら、マーヴェリックと親友の息子の関係がどう描かれていくのか。他のパイロットたちに接すると同等に、教官として彼をどう訓練していくのか。映画のスタート地点ではさまざまなことが起こるんだけど、素晴らしいのは、観客は前作に慣れ親しんでいるおかげで、あまり多くを思い出してもらう必要がないことだね。グースはこれまで、そして今でも愛されるキャラクターだし、その息子を演じるなんてワクワクしたよ。高まる期待があれば、誰だって誠実に準備に取りかかり実行に移すことができると思う。前作に欠かせない存在だった人たち―ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、ヴァル・キルマー、それに舞台裏のスタッフたちもたくさんいることは、大きなアドバンテージだったよ。このようなチームがいれば『自分ひとりで多くのことをしなければ』とは思わないだろう。自分自身でいると同時に、チームを信じるだけでいい」

 だが相手はトム・クルーズ―ハリウッドで最もストイックで勤勉な俳優であり、最も厳しい映画製作者である。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 46
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