April 2020

紳士が愛する名作服地 03

DORMEUIL “15.7”
ドーメル“15.7”(フィフティーン ポイント セブン)

text & photography(italy) yuko fujita
photography jun udagawa styling akihiro shikata

左:鈴木貴博ドーメル・ジャポン
1972年生まれ。生地畑一筋で21年。2005年にドーメル・ジャポンが設立された際の立ち上げメンバーであり、業界内ではドーメルマンの異名を誇る(温和です)。ドーメルについてのみならず、生地に関しても糸の組成からフィニッシングに至るまでを熟知している。

右:佐藤英明ペコラ 銀座
1967年生まれ。テーラーの3代目として館山に生まれ、日本で学んだのち、1988年にフランスに渡って学び、その後さらなる技術を求めて90年にミラノに渡ってマリオ・ペコラに弟子入りする。95年に帰国後、2000年に「ペコラ 銀座」をオープン。

ドーメルの名作服地“15.7(フィフティーン ポイント セブン)”をエキスパートが語る
6プライ&8プライの“15.7”は
ドーメルが起こした新たなイノベーション
長い歴史の中で常にイノベーションを巻き起こし続けているドーメルの今日において、
最も注目したいのは、「15.7」だ。特に三越伊勢丹の別注による8プライと6プライのそれは、
どんな生地のプロフェッショナルでも、それを触った人を魅了してしまう。

THE RAKE ドーメルのコレクションにある2プライの15.7に加えて、三越伊勢丹の別注で誕生した8プライの15.7は、2019年の秋冬に大きな話題を呼び、大人気となりました。

鈴木 スーパー160sに相当する原毛を使用しながら8プライの15番という太番手の強撚糸にして織り上げた、逆の意味でとても贅沢な生地になります。上品なタッチを残しながら、シワ回復力に優れ、ストレッチ性まで備えているため、飛行機に乗って会議に出て、そのままとんぼ帰りしてもスーツがシワにならず、しかも1日を快適に過ごせるというのは、スーツに詳しい方にもとても贅沢な響きだと思います。その8プライよりも、もう少し春夏に向いた生地を作れないかと考えて生まれたのが、春から展開する6プライです。こちらにはナノ加工で撥水機能をもたせており、守る、鎧を纏うという意味でアーマードの名を冠しました。

佐藤 世の中的には細い糸が好まれる傾向にありますが、原毛のマイクロンによってどこまで細く引けるかは決まっていて、それを無理やり細く引いてどうにかスーパー160sとか謳っているメーカーもありますが、これは逆の考え方で、細い糸を2本撚り合わせ、その双糸を4プライにし、最終的には8プライ15番手の糸にしているわけですよね。最良の原料を使用していて無理をさせていないから、8プライにしても生地本来の贅沢な風合いが残っていますよね。

鈴木 1mで1000回以上回転をかけると高撚(強撚)になるんですけど、その強撚の糸を使用しています。テンションがデリケートで、入念にケアしながら作っているので、かなり苦労しています。

佐藤 スーパー160sで6プライとか8プライとか、ふつうはそんな贅沢なことしないですよね(笑)。ただ、こういうのが欲しいお客様はいますよね。8プライであっても柔らかさとしなやかさがありますし、長時間の移動でもシワになりにくいし、色は無地で地味だけれどラグジュアリーな雰囲気がしっかりありますよね。特にこのきれいなグレイを見てしまうと、プライベートジェットで移動しているような人でも、極端にいえばそれ一着もっていけばそれでいいんじゃないの、みたいなね。僕ら作り手からすれば困った状況になってしまいます(笑)。

「このドーメルの15.7は8プライでありながら柔らかさとしなやかさを備え、長時間の移動でもシワになりにくそうですし、時代のニーズに合っていますよね。ハサミを入れるとわかりますが、ドーメルの生地の安定したクオリティにはそれなりの安心感があります」と佐藤氏。

本記事は2020年1月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 32

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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

SMITH WOOLLENS “ABACUS” スミス・ウールンズ “アバカス”

HARDY MINNIS “2PLY FRESCO” ハーディー・ミニス“2プライ フレスコ”