August 2019

CUBA’S FINEST

キューバ―最上の紫煙を求めて―

VEGAS ROBAINA
世界の葉巻愛好家の聖地
ベガス ロバイナ
葉巻を愛する人間なら、誰もが一度は
訪れてみたいと思う伝説のタバコ葉農園。
それがここ、ベガス ロバイナだ。

ロバイナ農園の現農園主ヒロシ・ロバイナ。上に飾られた絵画が、彼の祖父ドン・アレハンドロ・ロバイナだ。ヒロシは1976年生まれでハバナで育ち、かつてはハバナ市内の葉巻工場でトルセドールとして働いていた。来訪者との交流の場であるテラスの天井には来訪者が持ってきた国旗が飾られるようになり、今は世界中の国旗であふれている。

 ハバナから西へ140kmほどいったピナール・デル・リオ州のブエルタ・アバホは、世界最高のタバコ葉産地として知られる。同地のロバイナ農園は、その中でも最も高品質なカパ(葉巻の外側に巻かれるラッパー)を栽培することで、葉巻愛好家の間ではカリスマ的人気誇るタバコ葉農園だ。2010年に91歳で亡くなったドン・アレハンドロ・ロバイナ翁の祖父が1845年にスペインから移住し、その歴史は始まった。キューバ革命後に多くのタバコ葉農園が国営に変わりゆくなかで、ドン・アレハンドロは個人農園としてのロバイナを守り通し、世界で最も名の知れたタバコ葉農園へと成長させた。偉大な功績を残したドン・アレハンドロは、亡くなってなお、世界中の葉巻愛好家たちから愛され続けている。そんな彼の遺志を継いだのが、孫にあたるヒロシ・ロバイナだ。この由緒あるベガス・ロバイナの現農園主を務めている。

 ところでタバコ葉の栽培だが、グリーンハウスで育てられたタバコの苗は、毎年11月から12月にかけて畑に植えられる。取材時はちょうどこの時期だった。強い陽射しのなか、手で一本ずつ苗を植えていく作業はとても過酷だ。ロバイナ農園ではその後も馬糞とミミズのオーガニック肥料を与えながら畑を耕し続け、さらに17ヘクタールの畑すべてを真っ白な綿布で覆い、毎日灌水する栽培法を、もうずっと貫いている。苗を植えて3か月後に、葉タバコは背を超えるほどの高さまで成長するが、その収穫は3月~4月にかけて手で行われる。世界最上のタバコ葉を手掛けるためには、どれだけ重労働になろうと手間暇を惜しまない。そんなロバイナ農園に対する、世界中の葉巻愛好家たちの敬意は今もまったく変わらない。

「葉巻は文化であって、政治は関係ありません。世界中の友人たちが、代々引き継がれてきた私たちの農園に訪ねに来てくださること、そしてこの農園を守り、発展させていけることを、私は大変誇らしく思っています。この仕事は自分と家族にとって人生そのもの。祖父の遺志を引き継いで素晴らしいタバコ葉を栽培することは、私の使命です。ここは家族の絆をしっかり繋げておくための、そして私自身の居場所であるのです」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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