Monday, August 5th, 2019

CUBA’S FINEST
キューバ―最上の紫煙を求めて―

LA CORONA
キューバ最大規模の名門葉巻工場
キューバにとって貴重な外貨獲得資金の源となっている葉巻産業。
ハバナ市内にあるラ コロナは、この国最大規模の国営葉巻工場だ。

 1959年にキューバの社会主義革命が成立すると、アメリカは61年にキューバと国交を断絶し、翌62年から経済封鎖措置を開始。以来、キューバとの輸出入取引を拒否し続けてきた。が、昨年、アメリカは国交正常化交渉を続けてきたキューバ政府との間で国交を回復し、それぞれの大使館を再開することで合意した。ここ最近流れていた両国の和解ムードに期待を寄せる感はあったが、それが現実となったのだ。キューバ国民は物資不足の解消とそれにともなう生活レベルの向上を願い、アメリカはキューバへのビジネスの進出・新たな市場の開拓を狙う。また、世界最大の葉巻消費国とも言われているアメリカ人のキューバ産葉巻に対する関心は絶大だ。今後、キューバ産葉巻の入手ルートの流れ、価格の高騰など、キューバ産葉巻に大きな変革が訪れる可能性は大いにある。
 主要な外貨獲得源である葉巻の工場は国の体制下で厳格に管理されており、撮影するのは容易ではない。アメリカとの国交回復もあり、急激な社会情勢の変化を警戒してか、キューバ政府の統制はさらに厳しくなっている。そんななかで訪れることができたラ コロナは、従業員600名(うち8割が女性)、年間550万本を生産するハバナ市内最大の葉巻工場だ。
 キューバの葉巻産業はすべて国営で、それは工場も同様だ。工場はすべてTABACUBA社の傘下に帰属しており、各々のブランドに工場があるわけではない。例えば、ここラ コロナ工場でも、モンテクリスト、ロメオ Y フリエタ、オヨ デ モンテレイ、パンチ、ポール ララナーガ、クアバなど、さまざまなブランドの葉巻を手がけている。またコイーバの工場といえばエル・ラギートが有名だが、ラ コロナ工場でも熟練のトルセドール(葉巻職人)がロブストス スプリモスを巻いているのも興味深い。
 葉巻工場内には150年ものあいだ伝統的に「読み手」がいて、本や新聞の朗読を行っている。トルセドールたちは常に読み手の話に耳を傾けながらタバコ葉を巻いているのだ。そもそもキューバの教育レベルは世界においても非常に高いことで知られているが、読書によって啓蒙されたトルセドールたちが最も知識人であり、キューバ革命を後押ししたという実しやかなうわさ話にも、妙に納得できる。
 ラ・ガレラと呼ばれる巨大な巻き上げ作業部屋でトルセドールたちは横にテーブルを並べて何列にもなり、黙々と仕事をこなしている。世界で最上とうたわれるキューバ産葉巻は、このような環境で彼女たち(8割が女性)の手から生まれると思うと、なんとも感慨深い。

ロメオ Y フリエタの大きな旗が掲げられていたが、ほかにもさまざまなブランドの葉巻を手掛けている。ローリングルームは大変広く、ここだけでも余裕で100名以上はいたはずだ。

就労時間は毎朝7時30分から16時30分まで。日曜が休みで土曜の休みは月2回。給料は月15米ドル程度と言われている。従業員の平均年齢は45歳。経験を積んで技術を身につけないとできない仕事ゆえ、ここでは若い従業員でも28歳から30歳という。葉巻をくわえながら働く姿が妙に貫禄たっぷりだ。世界最高のハバナ産ハンドメイドシガーは、このような環境から生まれる。ちなみにここは1902年の創業、米西戦争の結果、キューバがスペインの支配から解放された年でもある。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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