BUDD, KING OF SHEARS

シャツ作りの王、バド

May 2020

text tom chamberlin photography kim lang
issue10

2点の服は、まるでオヨ・デ・モントレーのダブルコロナとラプサンスーチョンのように互いを引き立てる。

 ボタンは比翼仕立てで、ティアナン氏は私の身長を考慮して、私が好むジャケットの丈にしてくれた。素晴らしい工夫は携帯電話用ポケットだ。これは追加のポケットとして、右下のポケットの内側に縫い付けられた。私の携帯電話の寸法に合わせてカットしてあるため、ポケットが出っ張ることなく電話を携帯でき、すっきりした装いを保てる。

「電話の収納ポケットは、異なる型紙を6つか7つほどお持ちのお客様が、ビーチ用のシャツを依頼されたときに初めて手がけました。これまで数人の方にお作りし、大変気に入っていただいています」とティアナン氏。これは小さくて目立たない工夫だが、ビスポークをどんな風に楽しみ、活用できるかを示している。

 今回のケースでは、この2点の服がまるでキューバ産葉巻、オヨ・デ・モントレーのダブルコロナと中国の紅茶、ラプサンスーチョンのように、互いを引き立てている。対照的な質感と色彩が結び付くさまは、バッハが生んだポリフォニー様式の名カンタータを思わせる。

 新しい試みでありながら、このシャツを身に着けると独特の自信が呼び起こされる。その自信は、世界屈指の服だけがもたらす類のものだ。そんな選ばれたメーカーだけが加入できるクラブに、バドの服は間違いなく属している。

本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 33

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