BLOOD PRESSURE

共演で取り戻した“親子”

June 2017

text stuart husband
issue11_P43

2016年にアメリカで公開された『Forsaken(原題)』(日本公開未定)で共演したドナルド(右)とキーファー(左)。

 そんな避けられぬ加齢や、急速に高まる互いへの敬意が、今回の親子共演の実現に近づけた。キーファーは、過去約30年の役者人生の大半を、父と共演するのにふさわしい作品を探しながら過ごしてきたという。

「名作『黄昏』を観たとき、ヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダの親子共演はあまりにも純粋で、非の打ちどころがないと思ったんだ。いつか僕も父と共演できる企画を、と考えていたけれど、ある日父の年齢を考えたら、“もう時間が残されていない”と気づいた」

 演技の鍵は“研究”だというのがドナルドの持論だが、『Forsaken』の撮影中、キーファーは父と自分が同じ方法で役作りをしているという嬉しい発見をした。ふたりとも、演じる人物の内面や動機についての見解をノートにびっしりと書き綴っていた。また、撮影現場に到着すると、カメラが回る前にセリフを朗読し、さまざまな角度やニュアンスで演じてみる点も同じだった。

 だが、長年の関係はすぐに変わるものではない。キーファーはこれまでの役者人生で、あれほど撮影が怖かったことはなかったと言う。

「絶対に父の期待を裏切りたくなかったし、父も同じように感じていたと思う。でも、多くの父親は息子と釣りをしたりクルマをいじったりするけれど、僕は父と一緒に映画を作ることができたんだ。今までで最高の出来事だったよ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
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