Wednesday, July 8th, 2015

EMPIRE OF THE SONS

地球上で最も裕福な一族
―ロスチャイルド家の系譜―
19世紀初頭、ドイツ系ユダヤ人の銀行家が5人の息子をヨーロッパ各地の
金融の中心地に送り込み、家業を展開したときからすべては始まった。
それから7世代目の今も、ロスチャイルド家は地球上でもっとも裕福かつ有力な一族だ。
この一族をめぐる金、ダイヤモンド、戦争、ワイン、そして信仰と家族の物語をひもとく。
text james medd
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フランスにあるシャトー・ムートン・ロートシルトの航空写真。
この超一流シャトーを所有するのも、ロスチャイルド一族の分家だ。

今も活躍するロスチャイルド家

 20世紀に入ると、ロスチャイルド一族はお宝を手に入れるよりも、手放すことのほうが多くなった。ウォルターの展示品は、いまやロンドン自然史初物館に展示されており、巨匠による数多くの作品がひそかに美術館に寄贈されている。金は相変わらずあり余るほど入ってきたが、一族が特に芸術分野で名の知れた慈善家になったため、飛ぶように出て行った。

反ユダヤ主義と戦う また、不幸なことに、彼らは世界的な反ユダヤ主義の標的にもなってしまった。ナチスのプロパガンダ映画はもとより、突飛な陰謀説まで、枚挙に暇がない。
 これに対抗して彼らは断固たる態度で臨み、ユダヤの伝統に誇りを持ち、ヨーロッパ中で平等な権利を主張してきた。
 イギリスでは1847年にライオネル(1808~1879年)が庶民院に初当選したが、キリスト教徒としての宣誓を求められ、登院を阻まれた。
 彼は1849年に辞職したが、抗議するために補欠選挙で再び当選し、世論を味方につけることで貴族院に新たな法案を可決させ、キリスト教式の宣誓をしなくても庶民院に登院できるようにした。
 ロスチャイルド一族はイスラエルの建国にも貢献している。その先陣を切ったフランス・ロスチャイルド家のエドモン(1845~1934年)は、当時のパレスチナへの初入植を資金面で援助した。バルフォア宣言(イギリス政府の公式書簡)を受け取ったのは、熱心な動物学者のウォルターである。イギリス政府はバルフォア宣言の中で「ユダヤ人のナショナルホーム」設立に協力すると約束している。

現在のロスチャイルド家 ロスチャイルド家がユダヤ人社会で果たしている役割は今も変わらない。第4代ロスチャイルド男爵のジェイコブは多彩な慈善事業に関わり、イスラエルにある一族の財団「ヤド・ハナディヴ」の理事長を務めている。彼は一族の商才も受け継ぎ、富裕層向けのさまざまな金融機関も率いている。
 その他では変化したことも多い。ロスチャイルド家はもう金を扱っていないし、2010年には、200年にわたる一族の歴史で初めて、同族以外の経営者が金融帝国のトップに就任した。とはいえ、この一族がこれからも生き残ることは確かだろう。「ロスチャイルド」は、もはや単なる名前ではない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 03
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