WHEN EDEN ROCKED

楽園の終わり

October 2019

text nick foulkes

アリ・カーン、フレンチリヴィエラの自邸にて(1948 年)。

 オレグは、ここまで贅沢なひとときを他では過ごしたことがないという。

「後年ケネディ大統領とニューポートで過ごしたときは、ヘリコプターにヨット、シークレットサービスの集団まで随行する華やかな暮らしぶりを目の当たりにしたけれど、使用人の数と贅沢さではラ・レオポルダに太刀打ちできなかったな」

 コンゴを私領化して巨万の富を築いたベルギー国王レオポルド2世の旧所有地にあるラ・レオポルダは、建築家オグデン・コッドマンによって、20年代の終わりから30年代初めにかけて建てられた。

 コート・ダジュールの生き字引といわれるロデリック・キャメロン曰く、アニェッリ夫妻は「この邸宅にふさわしいカップルだった。若く、美しく、とびきりエレガントな夫妻はどちらもセンスが良く、ラ・レオポルダにふさわしいライフスタイルが板に付いていた」。

 だが、夫妻は去ってしまった。ラ・レオポルダが売りに出されると、リヴィエラの黄金時代も幕を閉じた。タキ・テオドラコプロスは次のように回想している。

「誰もが突如として南仏を去り、新興成金がやってきた。それからずっとこんな感じだ。金が入り、富を手にした者は南仏に来る。そして昔なじみはいなくなる」

 そしてジャンボジェットの登場により、大衆はジェットセッターの仲間入りをしたような気分を味わえるようになった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30
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