Sunday, October 13th, 2019

WHEN EDEN ROCKED

楽園の終わり

text nick foulkes

マレーラ・アニェッリとプリンセス・ピナテッリ(1962年)。

王宮をしのぐほどの贅沢 一方、20世紀最高のプレイボーイという称号をアリと争ったライバルのひとり、ジャンニ・アニェッリはコールやマーフィー夫妻がかつて夏を過ごしたラ・ギャループを借りて、パメラ・チャーチルと同棲していた。しかし、ラ・ギャループは豪華ではあるものの、ラ・レオポルダという壮大なヴィラに比べれば海沿いの掘っ建て小屋だった。

 リヴィエラのジェットセッター時代が頂点に達した頃、アニェッリはラ・レオポルダを手に入れ、別格の存在となった。常連客だったジャクリーヌ・ド・リーブはこう回想している。

「広大な庭園を車で抜けると、グランシャトーに辿り着きます。朝になると、プールサイドで過ごすか、アニェッリのヨットに乗るかを決めなければなりません。それから、豪勢なランチ。ゲストはいつもランチを楽しみにしていました」

 ジャクリーヌはディートリッヒと会ったこともあるという。

「ランチが終われば車に乗って友達に会いに行き、ディナーが終わればモンテカルロに繰り出したものです。モンテカルロのナイトクラブに行く者もいました」

 要するに、毎日がパーフェクトで、その思い出は半世紀以上経ってもゲストの心に残っている。何週間も滞在するゲストもいたし、100人のお客をもてなすディナーは日常茶飯事で、細部にわたる気配りはすべてとはいわずとも、ほとんどの王宮をしのぐほどだった。ギギの兄でファッションデザイナーのオレグ・カッシーニもラ・レオポルダで最高の夏を過ごしたゲストのひとりだ。

「ラ・レオポルダで滞在したのは本館から離れた小さなゲストハウスで、専用のプールがあり、お仕着せを着た専任スタッフが何人も控えていた。夜中でもシャンパーニュや食べるものが欲しくなれば、ベルを鳴らすだけで、ストライプジャケットと黒のパンツを身に着け、白い手袋をしたバトラーが現れる。ゲストハウスにはいつも生花が飾られていた。ターンダウンサービスが毎晩入るし、ベッドの上にはパジャマがきちんと畳んで置いてある。まるでヴェルサイユ宮殿のようだった」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30
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