Sunday, October 13th, 2019

WHEN EDEN ROCKED

楽園の終わり

text nick foulkes

少年時代のカリム・アガ・カーン4世。シャトー・ド・ロリゾンのプールから海に飛び込む滑り台の上で(1948年)。

 地中海の太陽を浴びてまどろむゲストたちはジミ・ヘンドリックスやクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの楽曲には詳しくないが、1969年にヒットした別のナンバーならわかるだろう。

 ピーター・サーステッドの『Where Do You Go To My Lovely?』はマリー・クレールという架空の少女に向けて書かれた曲だ。

 彼女はマレーネ・ディートリッヒのようにハスキーな声とジジ・ジャンメールのようなダンスの才能を持ち、バルマンのオートクチュールをまとい、髪にジュエリーをあしらっている。ソルボンヌで学び、大使館のレセプションでは数カ国語を流ちょうに操る。

 サン=ミッシェル通りに面した彼女のアパートには、ピカソからくすねた絵画が飾られているけれど、アガ・カーンから贈られた競走馬は置かれていない。

 彼女は一年を通して、しかるべきときに、しかるべき場所で、しかるべき相手といるようにしているので、夏はリヴィエラで過ごす。今では、それなりにまともな海岸沿いならどこでもリヴィエラと呼ばれるようになったが、半世紀前にそう呼ばれたのは地中海沿岸だけだった。

When you go on your summer vacation
(夏のヴァカンスになれば)
You go to Juan-les-Pins
(きみはジュアン・レ・パンへ行く)
With your carefully designed topless swimsuit
(デザインの凝ったトップレスの水着を着て)
You get an even suntan on your back, and on your legs …
(背中も脚もきれいに焼くんだ)

 このナンバーは、ジェットセッター最盛期の優雅で華やかな様子を描く一方で、終わりが近づいた日々を名残惜しむ讃美歌、そして哀歌でもあった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30
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