Sunday, October 13th, 2019

WHEN EDEN ROCKED

楽園の終わり

text nick foulkes

ジャンニ・アニェッリの別邸だったラ・レオポルダを上空から撮影。

 ビートンが今の南仏を見たら、どう思うだろうか?まあ、想像はつく。公共駐車場や群衆、ありふれたドレスと変わらぬ美意識の売春婦、スーパーカーやメガヨットは、辛辣な筆致で知られる彼の日記でこき下ろされていただろう。

 シャネルやウィンザー公、サマセット・モームの時代を知らない私はそれでも南仏に魅力を感じる。人や車があふれ、ビルが林立していても、在りし日のアリやアニェッリ、コールといったジェットセッターの姿を見てみたいと夢見る。なにしろ、ここには今でもエデンロックやシャトー・サン・マルタンのように古き良きコート・ダジュールの面影を残した場所があるのだ。

 様変わりした南仏を思って感傷に浸る前に、心ばかりの慰めとして、モンテカルロのオテル・ド・パリでハネムーンを過ごした若い花嫁の回想記から抜粋した一節を紹介しよう。新婚夫婦はこのホテルで「夫の知り合いだという美しい女性やエレガントな男性」に囲まれていたが、どんな知り合いかと聞くと夫は逃げ腰になる。「何度も聞いてやっと、美や魅力に値札が付いたコールガールだということがわかった。彼女たちを同伴している殿方を気にしてはいけないと言われて、ますます混乱した。数カ月前まで私に求婚していた男性もいたというのに」。

 これは1985年の話。それからも、状況は私たちが思っているほど変わっていないのだろう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30
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