VULTURE CAPTALISM

生涯を動物学に捧げた大富豪
第2代ロスチャイルド男爵

January 2020

text stuart husband

“乗っても走らせても静か”なシマウマの馬車で、華々しくバッキンガム宮殿を出るウォルター。

 ウォルターの遺産はさまざまな形で今も生き続けている。死後に国に寄贈されたコレクションはもちろんだが、彼が1902年にハンガリーから持ち帰ったオオヤマネも脱走の末、ルートン、エールズベリー、ビーコンズフィールドにまたがる地域に定着した。

 そして最も重要なことは、ロスチャイルド家に動物学的探究心が広がり続けたことだ。チャールズは、生涯で約3万種のノミを発見・収集し、その中には腺ペストの主要な媒介生物も含まれていた。

 また、ミリアムは、鳥に寄生するシラミ、羽毛に付くダニ、マダニ、吸虫といった寄生生物の専門家になった上、レディ・バード・ジョンソンとチャールズ皇太子に対し、所有する地所で野生の草花を育てて生物多様性を促進するよう説得した。

 これらはすべて、科学的知見を深め、老若男女に刺激を与えようとしたウォルターの生きた証しである。彼は飼いならされることのない、非凡な動物学者だった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 32
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