VULTURE CAPTALISM
生涯を動物学に捧げた大富豪
第2代ロスチャイルド男爵
January 2020
左:アルジェリアで収集旅行をするウォルターと一行。
右:風刺画家がヴァニティ・フェア誌のために描いたウォルター。
博覧会を開催 ウォルターは1868年に世界で最も裕福な銀行家一族に生まれた。病弱で引っ込み思案だった彼は、一族の屋敷内で教育を受けて育った。家庭教師たちが気づいたのは、彼が視覚的な記憶力や事実を長期間記憶する能力に優れていること。そして、屋敷で飼育されているニワトリや馬と跳ね回ったり、チョウや鳥を展示用に収集したりするなど、動物を人一倍好むことだった。
彼は、使用人が動物を剝製にして保存する様子を観察したことで、剝製術に興味を持つようになった。そして7歳のときに、将来は博物館を建てて動物や標本を収蔵すると宣言した。3年後、トリングのアルバートストリートにある物置小屋だったが、彼は自身初の博覧会を開催した。
さらに数年後、大英自然史博物館を訪れたウォルターは、同館で動物学の学芸員を務めるアルベルト・ギュンターと親しくなった。ギュンターはウォルターに学術的な助言と支援を提供する一方、ウォルターから飼育中の動物のさまざまな変化を書き綴った手紙を何通も受け取った。
1886年の手紙では、ウォルターは雌のディンゴを「ブライトンの街に連れ出した」と報告し、「非常に手がかかるが、万人に注目される」と書いている。後日、そのディンゴが子供を出産すると親バカぶりを発揮し、「これまで目にしたイヌ科動物の中で最も美しく粒揃い」と書き送った。その手紙の結びで彼は、「1匹7ポンドで買ってくださるご友人がいらっしゃるかどうか(探してほしい)」とギュンターにねだっている。