The Rakish ART ROOM Vol.15
貴殿も世界の名画オーナーに!
アンリ・マティス
July 2021
cooperation mizoe art gallery
アンリ・マティス / HENRI MATISSE (1869-1954)パブロ・ピカソと並ぶ20世紀美術の巨匠。20世紀初頭にはフォーヴィスムの旗手として活躍したが、後半生はニースを拠点に、大胆な色彩とかたちによる装飾的な造形を追求した。第二次世界大戦時は他の多くの画家のようにアメリカに亡命することなくフランスに残り、国民的画家としての名声を得る。晩年の切り紙絵による造形の冒険「ジャズ」シリーズも有名。
《火鉢のある室内》に描かれているのは、1920年代に数々の名作が生まれた、このマティスのアトリエである。カーテンの奥に広がる花柄のテキスタイルや、右側に見えるアラブの透かし窓をデザインした布は、この時期マティスが描いていた「オダリスク」ほかの室内画によく登場するおなじみのもの。中央左寄りに置かれた、三日月が付いた中東の火鉢も、《立つオダリスクと火鉢》(1929年、ピエール・アンド・タナ・マティス財団コレクション)などで大きく描かれている調度品だ。
毎日のように素描を描いていたと言われるマティス。何気ないスケッチのようなこの瀟洒な素描には、彼が愛着を持って繰り返し描いたさまざまなモチーフが詰まっている。
1921年、それまでのホテル住まいから、シャルル=フェリックス広場1番地のアパルトマンの4階にアトリエを構えたマティス。1927年には最上階の5階のフロア全体を貸し切り、内装工事を施して、1938年までこの快適な居室兼アトリエで制作した。
継ぎ目なく伸びる軽やかな線で描かれたエッチングの作品《バルコニーでインコを眺める若い女》は、このアパルトマンのバルコニーを描いたと考えられる。
1944年に撮影されたマティスと彼のアトリエの風景。この頃マティスは300羽以上もの鳥を飼っていた。当時彼のアトリエを訪れた人の話によれば、太陽が照りつける屋外から薄暗い玄関ホール抜けてアトリエに入ると、そこには観葉植物の間を鳥たちが飛び交うパラダイスが広がっていたという。証言通り、鳥が放し飼いされていたことがわかる。
本記事は2021年7月26日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 41