Sunday, November 1st, 2020

THE MAN WHO WOULD BE KING

俳優:レイフ・ファインズ
世界を救う英国紳士

text shiho atsumi photography aflo

007よりもフィットする
紳士のスパイ組織の創設者
 ファインズが併せ持つそうした「ワイルド」と「クラシック」の要素を考えれば、その両者を必須とするジェームズ・ボンド役にキャスティングされていた可能性も、あながち言い過ぎとは思わない。もちろん007の基本は黒髪ではあるが、ダニエル・クレイグも「掟破りの金髪」だ。だが想像力をたくましくすれば、そこでタイミングを逃したからこそ、よりフィットする『キングスマン:ファースト・エージェント』の主人公、オックスフォード公役がファインズにもたらされたともいえる。

「マシューと話し、脚本を読んで、僕が演じるオックスフォード公がどういう人なのか、とてもはっきりとわかったよ。僕は、彼のような人たちに会ったことがあるように思う。アメリカ人からは“昔気質”と言われそうな、ひそかに騎士道的な行動規範を守る、今はもういなくなったタイプのイギリス人。別の時代の映画から出てきたような、とても古風な人物だよ。世の中が登場人物の階級やバックグラウンドについて神経過敏になっているこの時代に、そういったキャラクターを避けたりしないマシューが僕は気に入った。オックスフォード公はとても貴族的なんだ。“気取っている”という意味じゃなく、ただ上流社会の生活様式で生まれ育った人だ。勇気や道義心、優しさという資質や、他人のために尽くす―そうした貴族の行動規範を体現し、そうする義務があると考えている。彼は謙虚で、とても慎み深い人物なんだよ」

“もう1本のスパイ映画”への知られざる出演 実はこの2本のスパイ映画のほかにもう1本、ファインズが出演した作品がある。その映画『アベンジャーズ』―あの『アベンジャーズ』とは異なる―は60年代に世界的に大ヒットしたTVシリーズ『おしゃれ㊙探偵』をリメイクした1998年の作品だ。ピアース・ブロスナン版ボンド全盛の時代にファインズが演じるスパイは、アクションもドラマも軽妙なロジャー・ムーア版ボンド型で、監督が代わるなど現場の混乱もあって興行的には失敗に終わったのだが、スパイ映画好きのマシュー・ヴォーン監督は、おそらくこの作品も見ているのだろう。山高帽とこうもり傘を駆使した『キングスマン:ファースト・エージェント』の一部のアクションは、この映画を彷彿とさせる。だがもちろん、作品としては同じ轍は踏まない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 36
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