August 2019

THE GRAPE AND THE GOOD

300年のラグジュアリー:レミーマルタン

text tom chamberlin

丁寧に栽培されたブドウの木が目の前に広がる。

 消費者の動向は、この20年間で急速に変化しました。かつてはクオリティはさておき、ステータスやブランドロゴが求められていました。しかしこの10年で、状況は一変しました。人々がロゴよりも“本物”であることを求めるようになったのです。それは私たちにとっては、好ましい変化です。このトレンドは、中国にまで広がりを見せています。

 もうひとつ、2000年頃から始まったトレンドがあります。それは、人々が価値観を共有できるブランドを求めるようになったことです。製品を買い、自分で楽しむだけでなく、ブランドを通じて自分の価値観を、外に示すことが重要になったのです」

レミーマルタンという存在「私が高級酒ビジネスに移ってきたのは、多くのことを与えられるのと同時に、多くのことを学べると感じたからです。レミーマルタンで働くのを決めたのは、ファミリービジネスだったからです。

 酒業界において、ビジネスをひとつのファミリーが経営しているということは大切です。物事を長い目で見ることができますから。高価格帯の商品では、特にこの点が重要だと思います。

 品質を確保するためには、時間が必要です。一定レベルの専門的技術や伝承も必要です。短期的な見通しだけで、妥協すべきではありません。ブランドにはそれぞれDNAがあり、そのDNAに忠実でなければなりません。コニャックに携わる仕事は、他の製品に比べて、対峙する時間の長さに大きな違いがあります。

 コニャックは造るのに時間がかかりますので、毎年違う製品を売り出すことはできません。その分、ブランドをしっかりと構築し、クオリティの高い製品を、確実に造ることが重要になります。そのことは、時として100年単位となります。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 17
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