October 2017

The Bold and the Beautiful

魔性の女、列伝

text james medd

ステファニア・フォン・コリーズ・ツー・ゲッツェン男爵令嬢、モンテカルロのスポルティング・ディベールにて(1959年)

 その前年にパリのオテル・リッツでメキシコの大富豪が武装強盗に奪われ、250万ドル相当のリングを奪われていた。

 保険会社は「素直に返せば、何も言わず30万ドルを払う」ことを公示した。ステファニアはあろうことか、そのリングを保険会社に引き渡そうとして、おとり警察官に逮捕されたのだ。彼女は自分が単なる仲介役だと主張し、仲間2人はムサック男爵の関与をほのめかした。

 ステファニアと男爵は延々と取り調べを受けたが、結局不起訴になる。しかし、ステファニアは前年にニューデリーのオベロイ・インターコンチネンタル・ホテルで起きた事件にも関与していた。そのときは、ダイヤモンドのイヤリング一対がホテルの金庫から盗まれたと訴えたらしい。

 以後の捜査で、彼女が多額の借金をしてジュエリーを購入していることが判明した。警察は残された宝石が本当に彼女のものかどうかを確認する必要があるとコメントした。

 ステファニアは2013年に亡くなった。本名その他は明らかになっていないが、美しき宝石泥棒としてのミステリアスな伝説は、今でも語り続けられている。

初のセックスシンボル 20世紀初頭は、魔性の女にまつわるエピソードには事欠かなかった。その好例がイヴリン・ネズビットである。アメリカ初のセックスシンボルと言われた十代のイヴリンは、画家や彫刻家のミューズとなり、清純でありながら思わせぶりな風貌が、プロテスタントの禁欲主義が根強く残る国の想像力をかき立てた。

 彼女の崇拝者には俳優のジョン・バリモアやポロ選手のジェームズ“モンテ”ウォーターベリ、出版社を経営するロバート・コリアー、そして建築家のスタンフォード・J.ホワイト、鉄道王の御曹司ハリー・ソーなどが名を連ねた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 18
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