August 2021

STYLE HEROES

フランスきっての色男
セルジュ・ゲンズブール

text natasha drax

レペットの「ジジ」を着用するゲンズブール(1971年)。スーツやタキシード、デニムでも素足でジジを履いていた。自宅には20足ほどストックがあったという話も。

 彼のスタイルのカラーパレットは、ニュートラルなモノトーンから大きく外れることはなく、特にオールブラックのアンサンブルを好んで着用していた。鮮やかな色を使うことは非常に稀で、使ったとしてもワンポイントでしか使わなかった。さりげなくシルクのポケットチーフを挿したり、鮮やかなスカーフを首元にさらりとあしらったりするのが彼のお決まりのスタイルだった。

 不必要なアクセサリーを好まない彼は、ブラックのレザーストラップのエレガントなドレスウォッチだけを着用し、それ以外を身に着けることは最小限に抑えていた。その結果、ピカソのような芸術家のフレンチルックとは異なり、イギリスのモッズサブカルチャーのように肩の力の抜けた、クリーンで控えめなスタイルを生み出していた。

無造作風スタイルは、意識的だった? 70年代に入り、イギリス人女優のジェーン・バーキンとの情熱的で奔放な恋愛が花開くと、ゲンズブールはスーツスタイルから、ロックミュージシャンとしてのライフスタイルを色濃く反映した服装に変えてゆく。イギリス人のミック・ジャガーのように、ゆったりとしたカラーシャツやストライプシャツを選ぶようになり、ボタンをヘソのあたりまで外して着用。さらにシルバーのチェーンネックレスを合わせてスタイルを完成させた。

 シャツの袖はまくっているか、袖口をゆるく開けているかのどちらかで、裾はハイウエストのピンストライプのストレートパンツにしっかりとインしていた。ブラックレザーのペニーローファーは、あえて素足のまま履いて足首を露出させて、無頓着でカジュアルなオーラをいっそう漂わせていた。

裏表の状態で縫った後にひっくり返すという手法で、しなやかさと快適さを最大限に引き出した「ジジ」。あらゆるスタイルでタウンユースできる永遠の定番。¥48,400 Repetto(ルック ブティック事業  Tel.03-6439-1647)

本記事は2021年5月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 40

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