May 2021

THE CHOICE OF WATCH EXTERIOR
―Chronométrie Ferdinand Berthoud―

限定個数のムーブメントから作る
究極の“ビスポーク”時計

過去の偉大な時計師の技術やデザインを受け継ぐブランドは少なくないが、その哲学や精神を、ビスポークともいえる形で深く継承する時計が誕生した。
text tetsuo shinoda

キャリバー FB-T.FC.RS12時位置が分表示で、2時位置の透明ディスクが時表示。10時位置にはパワーリザーブ表示が入る。スケルトン構造にすることで立体的なメカニズムを美しく表現しており、使われている技術もまた超ハイレベル。精度を高めるためにトゥールビヨン機構を組み込み、さらに動力伝達を安定させるために微細なチェーンを使うフュゼ・チェーン機構を採用している。

 かつての懐中時計は、お抱えの時計師にオーダーするビスポークウォッチであった。ケースに彫金を施したり、ミニアチュールの肖像画を描かせたり、あるいは複数の複雑機構を搭載させるなどして、周囲の時計愛好家とその珍しさを競い合っていた。しかし、そのためには、途方もない時間と予算が必要になる。懐中時計というのは、“金に糸目はつけない”といえる王侯貴族の粋人だけの、優雅な“遊び”だったのだ。

 現代の腕時計でも、こういったビスポークサービスがないわけでないが、それはあくまでも超VIPのためのサービスであり、そのハードルはとんでもなく高い。しかし、フランスの天才時計師フェルディナント・ベルトゥーの精神と哲学を継承する時計ブランド「クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー」はこの度、購入時にケースを選んだり、さまざまな仕様をパーソナライズしたりできるビスポークウォッチの販売を開始する。

 ビスポーク前提の時計というのは極めて異例なことだが、そもそも時計師ベルトゥーが活躍した18世紀はこれが当然だったことを考えれば、“ベルトゥーの哲学や精神を再現した”ともいえるだろう。

「フランス国王および海軍付き時計師」の称号を与えられたフェルディナント・ベルトゥーは、国家のために高精度海洋時計の研究を行ってきた。その代表作が上の「マリンクロノメーターN°8」。今回の新作時計の発想源となっている。

本記事は2021年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 40

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