紳士が愛する名作服地 01
SMITH WOOLLENS “ABACUS”
スミス・ウールンズ “アバカス”
April 2020
photography jun udagawa, frederic aranda, yasutoshi sawano
styling akihiro shikata
左:船橋幸彦氏サルトリア イプシロン
1953年生まれ。76年に渡英し、王室御用達のテーラーで修業後、イタリアのローマに渡ってトミー&ジュリオ カラチェニのもとで修業。80年に独立してローマで仕事をはじめ、94年にミラノにサルトリアイプシロンを開く。2009年に帰国。日本橋に工房を構えている。
右:直井茂明氏シゲアキ ナオイ
1981年生まれ。服飾専門学校を卒業後、ペコラ 銀座にて佐藤英明氏に4年間師事。その後、国内のいくつかを渡り歩き、自身の名を冠したビスポークを始動。軽やかで独自色豊かな服を打ち出している。三越伊勢丹ではメイド トゥ メジャーのみを展開。
スミス・ウールンズの名作服地"アバカス"をエキスパートが語る
時代を捉えた最良のバランスを備えた
新しいサヴィル・ロウ品質テーラード業界内で彼らのことを悪く言う人はいないほどスミス・ウールンズは愛されているが、
おふたりの目から見て、新作のアバカスもまただいぶすばらしいようだ。
クラシックな趣と英国らしさを100%残しつつ、アバカスには今までにない新しさがあるという。
THE RAKE オーダーにおける生地の人気傾向を探ると、ここのところ低番手の生地が増えていて、糸に撚り増しをした強撚タイプのものが流れとして出てきているように思います。スミス・ウールンズのアバカスはまさにそれで、そういった意味では新しさがありながら、でもすごく英国らしいですよね。
船橋 そうですね。スミス・ウールンズに対しては素朴で実直でいい生地を揃えている印象を昔からもっています。経緯双糸のしっかりした生地は、緯糸が単糸でソフトな仕上がりのイタリア生地とは明らかに一線を画しています。
直井 私はソラーロの生みの親というイメージが強いですね。好んで使用しているのは、フィンメレスコという生地ですが、スミス・ウールンズの生地は服になったときにどれも仕立て映えするんです。アバカスを触って思ったのは、ドライなんですけどフレスコと比べると柔らかさがあるのがいいな、と。そこに新しさも感じました。
船橋 シワにもなりにくそうですね。スミス・ウールンズは全体的に地味なんですけど、そのぶんクラシックの核心を突いた生地が揃っています。これがイギリスの生地だよっていう美意識が強くあるんでしょうね。
自分用に仕立てたいと、アバカスを裁断する船橋氏。「いい生地を裁断していると、腕が喜びを感じるんですけど、アバカスにはそれがある。経糸と緯糸がピシッとまっすぐ走っていて、クオリティがしっかりしていますね。テーラーからの評判がいいのには理由があるんです」
本記事は2020年1月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 32