Sex, Drugs and Moroccan Roll

背徳の街に集ったセレブリティたち

September 2015

by nick foulkes

ジョヴァンニ・アニェッリ、オスカー・デ・ラ・レンタ、ピエール・アニェッリ、アネット・リード。タンジールで開催された、雑誌発行人マルコム・フォーブスの70歳の誕生パーティにて。1989年撮影。

タンジールに魅せられたレディたち 貴族階級の移住者の典型例が、レディ・ウォーバンクスだ。若きカポーティによれば、彼女はタンジールに安息の場所を見つけたという。街中で2人の恋人と一緒に、タコのフライとペルノの朝食を楽しんでいる姿がよく見られた。

「レディ・ウォーバンクスは、ロンドン一の美人といわれていた。おそらくそれは本当だろう。彼女の目鼻立ちは整っており、きついセーラー服を無理やり着てはいるものの、生まれ持ったスタイルのよさを感じせるものだった。しかし、彼女のモラルは決してよいとはいえない。しかも、同じことは2人のお供にもいえる。1人は生意気そうな顔つきのおせっかいな若者で、その舌はまるで“スキャンダルの大釜を引っかき回すひしゃく”のようだった。彼は何にでも首をつっこみたがった。そして、もう1人はけんかっ早いスペイン人の少女で、髪は短く、瞳は革色。彼女はサニーと呼ばれており、私が聞いたところによれば、レディ・ウォーバンクスの資金援助を受け、モロッコの密輸組織で唯一の女性団員になろうとしていた。ここでは、密輸は人気の職業で、雇われている人間は数百人いる。サニーは、毎晩海峡を渡ってスペインへ行くボートとクルーを持っているそうだ。3人のお互いの関係については、とても活字にはできない。とにかく、この3人の間にはありとあらゆる悪行が詰まっている、といえば十分だろう」とカポーティは記している。

 ウールワースの遺産相続人で、かわいそうな金持ちの少女の典型ともいえるバーバラ・ハットンもまた、タンジールに魅せられた1人である。彼女の“シディ・オスニ”という邸宅は、ムーア様式の幻想的な建物で、輝くタイルの壁、複雑なしっくいの彫刻、穴の細工を施した木の間仕切り、水の音が響く噴水、ビジュー付きのクッションがいくつも置かれた、背の低い寝椅子などがしつらえられていた。

 夫妻は勝訴したが、ハッチソンは干されることとなる。相変わらず、コンサートホールと女性の寝室の両方でパフォーマンスを続けていたが、報酬はどんどん下がっていった。1969年に69歳で亡くなったとき、ハッチソンは一文無しだったという。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 05
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