Sex, Drugs and Moroccan Roll

背徳の街に集ったセレブリティたち

September 2015

by nick foulkes

マルコム・フォーブス70歳の誕生パーティに登場したモロッコ人騎手たち。タンジールのカントリークラブにて。

 この地域の美しさとデカダンスに多くの人が注目するきっかけを作ったのが、ポール・ボウルズだ。彼がこの地を初めて訪れたのは、1930年代初めのこと。40年代には住み着くようになり、20世紀末に亡くなるまで永住する。彼にとっては小説の執筆に最適な場所だった。彼の小説は、イギリスが誇る伝説の写真家セシル・ビートンの言葉を借りれば、「最新スタイルのデカダンスと孤独」で構成されており、「内に隠れた性欲を刺激するエキゾチックな文化に、衝撃を受けた白人が自分の世界からの孤立を感じながら、荒廃し、ぼろぼろになって死んでいく」というテーマを追求したものだった。

 タンジールは、少ない予算でぜいたくな生活を楽しもうとする、いかがわしい官能主義者のたまり場だった。ボウルズ同様に30年代にこの地を発見したのが、第15代ペンブルック伯爵の怠け者の次男、デイヴィッド・ハーバートだ。彼はタンジールでは、街を見渡せる山の上に建つ大豪邸で、王様のような生活水準で暮らしていけることを知る。

 18世紀の家具や立派な肖像画など、彼が手放した特権としきたりの世界をしのばせるガラクタが置かれた迷路のような部屋で、彼は数十年もの間、取り巻きの人間に囲まれて過ごし、ペンブルック家の紋章が入った磁器のグラスや銀製品で、ディナーを催したりしていた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 05
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