October 2019

SEWING THE SEEDS OF TIME

俳優:パトリック・スチュワート
円熟の境地

issue10

LOGAN/ローガン
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワートほか
配給:20世紀フォックス
長年の戦いで疲弊したローガンが謎の少女を命がけで守る、ロード・ムービー仕立ての心揺さぶる物語。ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワートは今作がシリーズ最後の出演となる。

「活動家のエンターテイナーは往々にして酷評されている。マスコミは社会問題に興味を持ち、きちんと意見を表明する有名人をからかい、セルフプロモーションだと決めつけるのが好きだ。多くはセルフプロモーションなんて必要ないほどの人物だから、不当な言いがかりだよね。彼らは演じること以外の方法で世界のさまざまな側面に影響を与えられるチャンスを見つけているだけ。『ショービジネスの世界にいる自分たちは、より良い世界を実現するために何ができるだろうか? 人々を楽しませるだけでいいんだろうか?』と時折思うものなんだ」

経験で円熟味を増す演技 彼の確かな演技を裏打ちしているのは、潜在意識に残る幼少時代の記憶よりも徹底した研究だろう。役柄に備えるために有用だと思えば、専門家にも相談する。

「役者にはふたつの役目がある。まずは観客を楽しませ、夢中にさせること。もうひとつは自然で信憑性のある演技で真実だと錯覚させることだ。ジェームズ・ブライディの『解剖学者』を演じたときは、グラスゴーにある病院の病理検査室を見学したんだ。教授に招かれて検死にも立ち会った。執刀を学生と一緒に離れたところから見学するんだと思っていたんだけど、行ってみたら隠れるところのない小さな部屋で90分にわたる死体の解剖を最後まで見ることになった。貴重な経験だったし、こうした経験は演技に真実味を持たせる上で役に立ったよ」

 70代半ばで円熟期を迎えているスチュワートがプロとしての武器だと考えているのが、まさにこうした経験そのものだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 16
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