Sunday, September 20th, 2020

MR.NO

ボンド役を断った男

アイルランド系アメリカ人俳優のパトリック・マクグーハンは、
ジェームズ・ボンド役のオファーを、一度ならず三度までも辞退した。
彼がそこまで大胆になれた理由とは何か。
text frédéric brun

Patrick McGoohan / パトリック・マクグーハン1928年、ニューヨーク市生まれ。幼少期に両親の故郷であるアイルランドに渡る。1950年代半ば以降、テレビドラマを中心に活躍。代表作に『秘密命令』『秘密諜報員ジョン・ドレイク』『刑事コロンボ』等。『プリズナーNo.6』では、自身が企画・制作総指揮・脚本・監督・主演の5役を務める。本ページの写真は、映画『Life for Ruth(原題)』(1962年)より。

「ボンドと僕には共通点がない。両者ともスパイであること以外、何ひとつね」

 1960年にスタートした人気テレビドラマ『秘密命令』と、続編の『秘密諜報員ジョン・ドレイク』で、国際的スパイのジョン・ドレイクを演じたパトリック・マクグーハンは、当時こう述べていた。マクグーハンは、007の映画シリーズ第1弾である『007/ドクター・ノオ』(1962年)でジェームズ・ボンド役を三度にわたってオファーされたにもかかわらず、辞退した。彼はボンドのことを、暴力と見境のないセックスという土台の上でのみ成立する、ワイン選びとスーツの着こなししか能のないアンチヒーローと見なしていた。彼にとって、辞退を正当化するのは簡単なことだった。「別にボンドをやりたくなかったし、後悔していないから」。

 実に新鮮で興味深い視点だった。マクグーハンはこう付け加えた。

「(ドラマ『セイント 天国野郎』の)セイント役をオファーされていたんだ。ロジャー・ムーアが引き受ける前にね。制作者たちは僕に、銃を持ち歩き、週ごとに違う女性と関係を持つ役をやらせたがっていた。しかしそれこそが、僕がセイント役を断った理由だよ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 35
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