POP ART
俳優マイケル・ヌーリー、アンダーソン&シェパードを試す
December 2019
photography luke carby & kim lang
裁断台で生地を準備するカッターのレス・ヘインズ氏。
人生初のビスポーク その日が訪れたのは、それから何年もの時を経た私が、コークストリートにあるヘンリープールの敷居をまたいだときだ。17歳になった私はある使命を帯びており、身に着けているブルックス ブラザーズのチノパンには夢と300ドルが入っていた。
おやじによく似た服装をした紳士が、そんな私に心のこもった挨拶をしてくれた。そこで父の息子だと自己紹介すると、温かく歓迎されたうえ、1806年からは国王や紳士たちの衣服を、そして1950年代からは父の衣服も仕立ててきた神聖な店のさらに奥へと招き入れられた。
「ご用をお伺いしてよろしいでしょうか?」と彼は言った。
「スーツをお願いします。スリーピース、ダークブルー、チョークストライプ柄で。トラウザーズはボタンフライ仕立てでサスペンダー用のボタンがあるものを」と答えると、こちらへと案内された。鏡はあるがエアコンはない部屋に通された私は、肩、胸、腕、ウエスト、アウトシームやインシームの採寸を受けた。
巻き尺を手にしたテーラーは「お客様はどちら側の装いをされますか?」と尋ねてきた。何のことだか見当も付かなかった私は、「うーん、右利きですが?」と答えた。常に紳士的なテーラーが笑いの衝動に耐えてくれたため、私は恥ずかしい思いをせずに済んだ。「承知いたしました。2週間後、次回のフィッティングにお越しいただけますか? スーツの完成にはフィッティングが3回必要となります」
トラウザーズのカットを開始。