August 2020

PAUL FEIG'S MIXED BLESSING

お洒落監督の流儀
―ポール・フェイグ―

text tom chamberlin photography robert spangle

1980年代に一世風靡した名作のリブート、『ゴーストバスターズ』(2016年)のセットで。

 彼は今、ハリウッドが正しい方向に進んでいると思っているのだろうか?

「ええ。やっと以前よりも現実的な方法で少しずつ進んでいるようです。#MeToo運動や、さまざまな訴訟や調査、そして女性の映画制作者が大金を稼いでいるという現状によって注目されてきました。ハリウッドは利他的ではありません。ムーブメントに追随しても損失が出てしまうようなら、すぐにこうした動きは終わってしまいますが、利益を生み出そうとするなら、それは利他的な思考ではなくビジネスマインドです。

 でも、努力して実力を示せる人やスタジオはそんなことをまったく気にしません。パティ・ジェンキンスやエイヴァ・デュヴァーネイ、キャスリン・ビグローといった女性監督を考えてみてください。彼女たちが手がけた作品は、確かに大金を生み出しているのですから。私たちは男女を問わず、誰もが活躍できる環境をきちんと整えなければなりません。

 業界の統計によれば、ほとんどの男性監督は仕事のスパンが約1年、女性監督は約10年なのだそうです。これほど時間がかかるのは恥ずかしい。ハリウッドは利他的な街ではないけれど、排他的で保守的な悪人だらけの街でもありません。ここは世界屈指のリベラルな業界。スタジオのトップが、“どうやって女性を騙そうか”と思案することもありません。でも、現状に疑問を持たない既定路線はつまらない。私がやろうとしているのは、既定路線の打開なのです」

本記事は2020年7月27日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 35

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