August 2020

PAUL FEIG'S MIXED BLESSING

お洒落監督の流儀
―ポール・フェイグ―

text tom chamberlin photography robert spangle

スパイ・コメディ、『SPY/スパイ』(2015年)でジュード・ロウとメリッサ・マッカーシーにアドバイスするポール。

 できすぎた話のようにも聞こえるが、ポールのアプローチは追随者にとってひとつの指針となる。確かに、彼は周囲に対していつも親切で礼儀正しい。

「私は衝動的に行動することもある人間ですが、それを性格の特徴とされたくはありません。常に相手を思いやりたい。“衝動”に負けて人間関係における礼儀を欠きたくない。相手にも常にいい気分であってもらいたいと思っています。これまでの人生で、私は意地悪な相手に何度も自尊心を傷つけられてきました。最悪だと思うのは、言葉によって人を傷つけ、不快にさせ、困らせて、相手の一日を台なしにすること。私は人を褒めて育てたい。そのほうがいい仕事をしてくれます。相手に嫌な思いはさせたくありませんからね」

能力主義になった現代 ショービジネス界の有望な人材が直面しているもうひとつの問題は、俳優の90%が仕事にあぶれているように、この状況がスタッフにも当てはまることだ。若手の監督が知名度を上げる過程で直面する問題は、ポールの駆け出しの時代とはまったく違うものの、解消されるどころか新たに生じている。

「初めて監督を務めた映画『Life Sold Separately(原題)』(1997年)をつくったときは、かつてないほど低予算に抑えられるよう脚本を書きました。4人の出演者にエイリアンから“もっと良いところへ連れて行く”というメッセージが届くという話です。35mmフィルムと撮影機器、編集機材を買う必要があったので、35000ドルもかかりました。今の時代なら、何も買わなくてもこのくらいの映画はつくれるでしょう。映画学校で講義するときは“とにかくやってみましょう。やれない言い訳はありません”といつも言っています。当時の私はどうしてもやりたかったので、家計が破綻するほど機材を買い集めました。やる気があるのなら、毎週映画を撮るべきです」

本記事は2020年7月27日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 35

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