Monday, August 26th, 2019

MICHAEL FASSBENDER
LOVING THE ALIEN
変人役を愛でる理由

巨匠との3度目のタッグ

「思うに、偉大な監督というのは人を操ることに長けているんだ。そうでないと務まらないのは、当然のことではあるけれど。撮影を進めていく過程で、彼らにはいつも巧妙に導かれているように思う。ひとたびセットに入ると、立ち上がり走っているんだよ。『SHAME -シェイム-』の撮影では、僕は“自分が最高の役者だとスティーブに見せてやれ。彼をがっかりさせるな”と思っていた。それが俳優たちだけじゃない、すべてのスタッフにいきわたっていたんだからね」
 だがそんな監督の要求にすべての俳優が応えられるかといえば、それは違うだろう。マックイーンが新作のたびに必ずファスベンダーをキャストするのは、それに値する俳優だからに他ならない。監督と俳優のそうした幸せな関係を、彼は別の監督とも築き上げている。巨匠リドリー・スコットだ。
「彼の映画にはアクションと恐怖があり、さらに登場人物のキャラクターもしっかり描かれている。観客として料金を払うに見合う作品なんだ。それに、生命と死後の世界にまつわる疑問について考えさせる―もし実際にあったら、ってね。それが彼のすごいところだ」
 最初のコラボレーションは『エイリアン』シリーズの前日譚『プロメテウス』(2012年)。さらにその翌年の『悪の法則』を経て、主演最新作『エイリアン:コヴェナント』へと続く。ファスベンダーが演じているのは前作と同役のデヴィッドと、今回新たに登場するアンドロイド、ウォルター。つまり、アンドロイドの一人二役だ。
「ウォルターはデヴィッドの別バージョンと言えるね。デヴィッドは、人間らしいパーソナリティが育つようプログラムされたタイプで、だからこそ人間を怖がらせたんだ。それゆえに次世代型のウォルターは、人間的な特徴が削られている。感情のないロボットみたいな感じだ。今回の作品に登場するデヴィッドは、10年にわたって蓄積された“人間らしさ”が、アンドロイドとしてのパーソナリティと同じレベルにまで達している。彼に冷え冷えとしたものを感じさせるのは、彼の“人間らしさ”―エゴ、プライド、野心なんだ。すごく不気味なのはそこだね」
 完璧であるはずのアンドロイドが“人間らしさ”を獲得することによって、より冷酷になってゆく。その展開には戦慄を覚えるが、不完全さをもってして“人間らしさ”とすることは、ファスベンダーの役選びにも合致している。
「欠陥のあるキャラクターを好きなのは、僕らみんながそうだからだ。人と人がスクリプトの中で決裂すれば、“そうだ、ここで涙を流すに違いない”って思うだろ? でももしかしたら、本当は両方とも笑っているかもしれない。人間は複雑だ。僕らの行動はそれぞれに奇妙。それをリサーチできる機会が好きなんだ」

アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたダニー・ボイル監督作品『スティーブ・ジョブズ』(2015年)。怒涛の情報量に圧倒される作品。
Photo by Getty Images

THE RAKE JAPAN EDITION issue 17
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