POCKET GUIDE: AIR MALE

世界のファッショニスタに学べ:マイケル・ヘイニー

Friday, September 3rd, 2021

Air Mailの編集者マイケル・ヘイニーはブリティッシュ、フレンチ、イタリアンのどのスタイルをも巧みにまとめ上げる敏腕だ。

 

 

text tom chamberlin 

translation wosanai 

phorography rose callahan

 

 

Michael Hainey/マイケル・ヘイニー

自叙伝『After Visiting Friends:A Son’s Story』の著者。GQやEsquireといった媒体を経て、現在は毎週土曜朝にメールで記事が届くデジタルウィークリー『Air Mail』の編集者を務める。

マッシモ アルバのコーデュロイスーツは、新しいボンド映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』にも登場。ドレイクスのグリーンのプルオーバーとのコントラストが美しい。シャツはシャルべのもの。

 

 

 

 こういったポケットガイドのようなページは、きっとマイケル・ヘイニーのような人物によって編集されているのであろうと、若かりし頃は思っていた。彼はAir Mailの編集者になる前はGQ、そしてEsquireに在籍していた。読者の皆さんにも絶対に読んでもらいたい彼の自叙伝 『AfterVisiting Friends:A Son’s Story 』は、彼の父親の早すぎたミステリアスな死を解き明かす名著である。

 

 マイケルを見いだしたのはAir Mailの創始者であるグレードン・カーター。マイケルが1989年に雑誌SPYでインターンをしていた時だった。

 

 

マイケルは自身をセンチメンタリストだと語る。この灰皿は、妻ブルックさんにプロポーズしたイタリアのポジターノにある「Le Sirenuse Hotel」のもの。記念の品だ。

 

もしも“紋章”に特化した雑誌の編集者がいれば、このモットーはそんな彼らにこそふさわしいだろう。このラペルピンはボーイスカウト時代のものだが、この言葉は今でこそ響くという。そして若い頃グレードンから伝えられた「ジャーナリズムの成功には予感が大事だ」という言葉、そして彼のモットーだった「Don’t fuck it up.(やらかすな!)」は今でも彼の中に深く刻まれている。

 

 

 

 マイケルのスタイルはユニフォーム的なシングルのスーツにシャツ、セーターとオーセンティックなものだが、「ブリティッシュ、フレンチ、イタリアンの良いところをアメリカンの目によって編集しているのが肝です」と彼はつけ加えた。彼とZoomでチャットをしていても、基本的には同じ服装に見えるが、着回しが実に巧みだ。彼は自身のスタイルやサルトリアルな知識について、とても自然に、かつ嫌みなく語ってくれる。そして会話の中で彼の声がとても心地良いことに気づく。話も上手ければ声もいい。なるほど、彼がスタイルエディターのアシュリー・ベイカーと配信しているAir Mailのポッドキャスト『Morning Meeting』が好調なのもうなずける。

 

 マイケルは決して派手な人物ではないが、間違いなく掘りがいのある傑物であるのは疑いようがない。

 

 

グレードンからのクリスマスギフトはAir Mailに入ったスタッフみんなに配られた。マイケルは喫煙者ではないが、実はこれは彼にとって手放せないアイテム。「子供たちがハンドスピナーに夢中になったでしょ?これはそのアナログバージョンといった感じです。デスクに座って考え事をするときにこれをいじらずにはいられないのです」。

 

この財布はエルメスのもの。「無駄を省け、ということです。財布に限らず、自分自身もそうでありたい。文章もそう、デザイン、人生も同様です。ときどきルーベンサンドイッチかと見紛うような財布を持っている人がいますけど、一体どうすればあんな分厚さになるのか甚だ疑問です」。これには思わず納得だ。

 

アリゲーターストラップが付いたカルティエのタンクは、彼が初めて所有した時計。「タンクにまつわる物語が好きなんです。それに共鳴したという感じです。基本的にアイテムの背景にある秘話は大好物です。この時計はそういった意味で一番エレガントな時計だと思いました」。

 

マイケル曰く、オールデンのチャッカブーツは彼のスタイルに一番しっくりくるのだという。「安い靴を買うことは結局経済的にもよくないのです。そして昔から〈靴から始めろ〉と言うように、歩いていて気持ちが良いと他の日の装いも良くなるものなんですよね」。

 

アンティークの鉄道レールに使用される大釘(SpikeまたはPegと呼ばれる)。マイケルのデスクでペーパーウエイトとして使われているもので、祖父が働いていた車両基地でもらったものだという。ただ、本来の意味ではなく、ジャーナリズム界隈の特別な語彙としてしばしば使用されるSpike、Pegという言葉にかけて、いつも使用しているもの。

 

「このレターオープナーは私の父が自分で作り、彼の兄にプレゼントしたものです。父が亡くなり、伯父が私に託してくれました。おまじないや魔除けの類は結構信じているタイプです。誰かの心をふるわせるものはきっとあなたの心もふるわせるでしょう。そういうエネルギーは与えることもできますし、ときには与えられることもあるんですよね」

 

ニューヨークのレストラン「La Grenouille」でブルックさんと結婚したときに、記念として持ってきたマッチ。写真1枚目の灰皿に比べれば簡単に持って帰ってこられたであろう。ウエディングリングは一番良くしてくれた祖母が生前つけていたもの。サイズも変更して、今ではすっかり彼の指に馴染んでいる。

 

オスカー・ワイルドは「とりわけ人生で大事ではないものを大事に取り扱うべきだ」と語った。本誌で扱うにはびっくりするような何の変哲もない鉛筆は、実はそういった類のものなのかもしれない。「詩人であるロバート・グレーヴスは『この私、クラウディウス』を書いている折、古いローマの硬貨を仕事机の上に置いていたようです。その物語の時代背景にあるものに実際に触れることによって、本来見えることのないものが見えるような気がしたのでしょう。この鉛筆はシカゴで新聞の編集をしていた父親が使っていたものです。私も自分の本を書くときに使用しました」。

 

もしかしたらこれは、実際の金額でいえば今まで紹介した中で一番安い、ないしはまったく値がつかないのかもしれないが、本人にとっては何よりも価値のあるもの。この古い新聞の切れ端はシカゴでの求人広告であり、マイケルの祖母が娘であるマイケルの母親に応募してみなさいと渡したものであるらしい。運良く彼女は採用され、夫となるマイケルの父とその職場で出会うことになる。「語り部としてこれほどドラマティックなことが身近にあるでしょうか?本当に些細なことが、ときには人と人との人生を交差させることになるのです。この紙切れがまさにそれなのです」。

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue41