LOUIS,KING OF THE SWINGERS

英雄の裏の顔、マウントバッテン卿

July 2019

text tom cheshire

1924年6月4日に、エドワード8世(前列左から3人目)に随行し、日本を訪れた際の一枚。ルイス・マウントバッテンは、後列左端。全員が着物を着ている珍しい一枚。

 鉄のように頑強な英国の英雄は、こうして生まれた。ハンサムで、チャーミングで、ひたむきで、勇敢だった。しかしマウントバッテンには“無私無欲”という言葉はふさわしくない。国家のために多くを捧げたが、大きな見返りも求めた。彼は時に強引とも言えるやり方で、名声や勲章を手に入れた。

「自分の知るかぎり、私は一番のうぬぼれ屋だ」

 押しが強く、有名人の話をひけらかし、とりわけ晩年はうんざりするような人物だったが、その被害を受けたのはロイヤルファミリーと王立海軍の幹部だけだった。英国の一般市民にとって、このドイツ系プリンスは、英雄そのものだった。1979年に、家族とボートで出航中にIRAの手により殺害されたときには、国中が大きな憤りに包まれたが、これが北アイルランドとの和平のターニングポイントになったといわれている。

二人ともバイセクシャル 若い頃は、プレイボーイというイメージが強かった。「驚くほどにハンサム」と言われた海軍将校時代は、ウィンストン・チャーチルや、従兄弟にあたる皇太子時代のエドワード8世と親交が深かった。ファッションにも定評があり、アイボリーカラーのウエストコートで流行を先取りし、ファスナー留めのトラウザーズをはくパイオニアでもあった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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